玉響チトセの休憩時間
タブレットの送信ボタンをタップし、玉響チトセは力なくテーブルに突っ伏した。
執事の坂瀬がすぐさまお茶菓子を部屋に運び入れる。紅茶が湧きたつ間、チトセはもそもそとクッキーをついばむ。
沁み渡る甘みが全身を巡り、チトセはしばしの至福を堪能する。
「お疲れ様でございます」
「本当よ。何故わたくしがこのような目に…」
敵国の調査。各国が不思議な声を確認した時、これまでの盤面がひっくり返った。
力押しでの勝負から情報戦へと変わり、フェンテスが頭抜けた分野に対して勝負を挑むことになったヒノイは、これまでの鬱憤を晴らすかのようなフェンテスの逆襲を受けていた。
ジャミング、暗号解読、ハッキング、即時公開、偽情報流布、etc...
情報を一片も与えず、根こそぎ奪ったうえで上層部のスキャンダルを公開、清廉潔白な者すら偽情報で泥を塗る徹底ぶりであった。
戦いとも言えない一方的な蹂躙を前にヒノイ上層部はたちまち悲鳴を上げた。
名家の血筋はしがらみだらけ。帰宅早々のチトセは哀れ情報収集・防諜の任を引き受けさせられるのだった。
「わたくしのやることは単純なのですけれど…」
フェンテスの情報を手に入れたら時間遡行で即時送付、フェンテスへの情報漏洩があれば時間遡行で即対策。この繰り返しである。
それでも被害が多すぎた。結局被害を抑えるためにほぼほぼ最初の情報漏洩前のタイミングまで遡行する羽目になった。
数度の時間遡行で貯まりに貯まった情報および対策をまとめて送りつけたのが今、というわけである。
「あの親戚、許しませんわ…!」
泣きついてきた上層部など今や未来、こちらの世界線では無事にのほほんとしているだけである。
人に苦労をさせておいて誠に許し難い。今度会ったら脛を蹴る。学園指定の固いローファーで蹴るとチトセは決めた。
「あまりご無理をなされませんよう…」
「勿論ですわ。わたくしはいつだってわたくしのためにこの力を揮いますわ」
今回は上層部への大いなる貸しとなったはずだ。特にスキャンダルを隠していた者たちにとって。
然るべき時に利子付きで返してもらうことにし、チトセは淹れ立ての紅茶を楽しむのだった。
…猫舌なので香りだけ。
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