Trick or Treat?
何年も前に閉鎖され、今は放置されている廃ビル。
ハロウィンの夜にそこに入ると、ジャック・オ・ランタンをかぶった男が現れて、その……いやらしいことをされるそうだ。
しかも、その対象はわたしたちみたいな子供――いわゆる、ロリコンなんだとか。
ウワサの反応は人それぞれで、大体は笑って流すか、怖がるかのどちらか。
だけど、中には興味をもって実際に会いに行こうとする子もいたりする。
高学年にもなってくると、だんだんとそういう話だってわかるようになってくる。
大人はまだ何も知らないって信じたがるけど、わたしたちもバカじゃない。一人でしたり……カレシがいる子だっている。
そんな女の子たちにとって、このウワサはとても刺激的なものだった。
ハロウィンの夜。
お祭り騒ぎを抜けだして、わたし達は廃ビルに向かう。
真っ暗でおどろどろしいビルの中を、おもちゃのキャンドルをかざして進んでいく。
3階の一番奥にある家具売り場の跡地で、ジャック・オ・ランタンはわたし達のことを待っていた。
スプリングの飛び出したソファーに座る男に向かい、わたしはお決まりのあの言葉を告げる。
「Trick or Treat?(犯しと悪戯、どっちがいい?)」
呪文
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