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そうだ、アイドルになったらいいじゃない

使用したAI Dalle
「最近のホタテ、ちょっと小さくなぁい?」
白くま少女と二人、夕食のおかずを突いていた白ラッコから、不満の声が漏れた。
アイドルの歌番組を見ていた白くま少女が、テレビを見たまま、すかさず言う。
「お父さんが一日に食べる食事量は5Kg。そしてお父さんは無職です。ここから導き出される答えは?」
「……もっと食べろってこと?」
「なぜに!? お父さんも働いたらどうってこと!」
「僕に務まる仕事なんて、あるだろうか……。前にコンビニでバイトしたときは、品出しの合間につまみ食いしたら首になったし、クロラッコヤマトの宅急便では、クール宅急便のホタテをつまんだら首になったし」
「その行為に、首以外の選択肢はないねぇ。私が弁償したんだよね……。もう少しだけ、本能を抑えてみたらどうかな?」
「ホタテが目の前にさえなければ、理性を保てるんだが……!」
「パスタでも理性失うくせに」
「食べてるだけで給料が貰える仕事があったらいいのに!」
白ラッコがそうぼやいたとき、白くま少女はふとテレビを見て思った。
(ワンチャン、大食いタレントならいけるのでは?)

翌日、タレント事務所に面接にきた白ラッコと白くま少女。
門前払いも致し方なしと、気合を入れてきた二人の思惑をよそに、面接は和気あいあいと進んだ。
「結果は後日お知らせますが、ふふ、良い結果を期待してくださっても?」
こんなこと言われる面接、あるだろうか。

その後、トントン拍子に採用、そしてデビュー日までが決まり、あまりの早い展開に戸惑う二人。しかも大食いタレントで応募したのに、採用はアイドルになっていた。
「事務所の人、なんかお父さんと別の人、間違えてるんじゃないかな?」
「僕、緊張してきた!!」

担当マネージャーさんに言われるがまま、ドレスを着て下手な歌を披露する白ラッコ。
「ど、動物が歌ってる!?」
「余裕で人語解してる、ロボットじゃないの!?」
茶の間をお騒がせしながら、白ラッコの人気は順調に上がりつつあった。

このままいけば紅白もあるのでは! という昼のバラエティ特集を見ながら、白くま少女は、立派になった白ラッコのテレビに映る姿を、涙ぐみながら見ていた。
(ラッコのミュータントって人間受けいいんだなあ。ここ30年くらい人間いなかったから、世間の感覚がわからなくなってたよ)

しかし、終わりは突然やってくる。担当マネージャーさんが蒼白な顔で、二人の暮らす4畳半に突撃してきた。
「た、大変です!! ラッコは天然記念物だから、働かしちゃだめだそうです! 政府から業務改善命令が来ました!」
「え、うそ!? (そんな昔の文化財保護法とか、まだ有効なんだ……)」

この事件はのちに、『天然記念物の絶滅種を酷使したアイドル業界のヤバい案件』ということで、『ヤバドル事件』と呼ばるようになる。
こうして、白ラッコの短いアイドル人生は終りを告げた。
白くま少女の食費を捻出する闘いが、再び始まろうとしていた……。

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