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試作代用食材【Ver:3.192】第41回実食試験における音声レポート(元ネタあり)

使用したAI TrinArt
盗作だ、パクリだ、等といったご指摘を受ける前にあらかじめネタバラシをしてしまいますと、このキャプションの文章の元ネタは『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』等で有名な田中芳樹先生の初期短編集『流星航路』に収録されている作品の一つ、『品種改良』です。田中芳樹ファンで未読の方は是非ご一読をお勧めします。

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記録者:Ms. Sabre-toothed Tiger

 ――録音開始。

 食肉、という文化は古代における原人類が火を手に入れた時から始まったに等しいと言っても、さほどの大言壮語とはならないだろう。
 そのまま食べるには危険な生肉を加熱し、栄養価の高い食材に変えるという一手間。それは料理という文化的技術の始まりでもある。
 以来、人類は様々な調理法を編み出し、それに伴い調理器具を進歩させてきた。

 焼く、煮る、蒸す、炒める。あるいは冷やし、凍らせることも。
 包丁や鍋は鉄の加工技術が発達しなければ普及は難しい。加熱するための火力の確保のために、竈そのものの素材も石や煉瓦から、時代が下るにつれより耐熱性の高い冶金術の発達によりオーブンなどの高度な調理器具へと変化していった。
 人類がその生存圏を広げるに伴って新たな食材が見いだされ、また同様に様々な調味料も生み出された。それらの食材を手に入れるには輸送手段の発達が必須であり、また保存技術の発展も促された。
 いわば、料理とは高度な文明社会の結晶そのものであり、逆説的に、文明が亡びに瀕している現在に至っては、その調理法も著しく退化せざるを得ないのだ。
 例えば、今の私のように。原始的な焚き火で食材を焼くしか他に手立てがない状況である。

 前置きが冗長になり過ぎた。本題に入ろう。

 ここ、「フラットランド」は物資工場や集積所が数多く存在する。ここでならば多様な食料を入手することも難しくはない。言い換えれば、ここで購入される食材は、多くの人々に広く受け入れられている普遍的なものである。
 しかし、それらの物資を作り出す工業機構が今後も故障することなく永久に稼働し続けてくれるという保証もない。
 いずれ人類が更に遠くへ、更に広い範囲を探索する必要に迫られた時に備え、将来的な展望として新たな食材を確保するのは黄昏梟において探索を任とする『エクスプローラ』の一員としても急務であろう。
 農業というのは種蒔きから収穫まで時間を必要とし、また品種改良においても非常に時間がかかる。牧畜・畜産においては、そもそも家畜を育てるためには相当量の牧草や飼料が必須である。結果として終末事変前の人類はそれら一次産業を著しく衰退させることとなった。今さら、それらのノウハウを復活させるには非常に手間がかかるだろう。人類に残された時間は、あまりに少ないというのに。
 従って、研究者としての私は別の視点からアプローチせざるを得ない。

 プラナリア、という生物が存在する。

 扁形動物門有棒状体綱三岐腸目に属する、雌雄同体の雑食性動物である。
 この生物が特に有名なのは、その高い再生能力にある。全身を複数に切断されても、それぞれ別の個体として再生する。数十数百単位の肉片にまで分割されても再生する。さらには無性生殖も可能で、一体が二体に分裂し繁殖する。
 言うまでも無く、これらの再生には栄養環境が前提として必須となるにせよ、魚や肉、あるいは昆虫などの動物質系の死体があればそれを主食として栄養にすることが可能である。これは極論になるが、人間の死体を食べさせて育てることすら可能という言い方もできよう。とはいえ、基本的には昆虫等を餌とするのが一番手間をかけずに済むだろうが。

 旺盛な生命力、再生力、繁殖力を持ち、昆虫という飼料と水があれば幾らでも殖やせる。食材とするには理想的な条件を備えている。
 これをもって将来にわたって安定的な食材として確保することは出来ないだろうか。私は遺伝子工学と生物工学の観点から改良を始めた。

 ――…とはいえ。現状、これを食材にするには無視し得ない極めて重大な問題が二つも存在する。

 その一つ目は、安全性。
 そもそも食材としての有用性を高めるために強化した生命力および再生能力が逆に裏目に出た形だ。火で加熱したとしても、生焼け程度では死滅してくれない。黒焦げになる寸前まで念入りに火を通して、ようやく何とかといったところだ。
 もし不十分な加熱でこれを食した場合、胃の中でも胃酸に耐えながら、その宿主が食した水や食材を吸収して生き延びる。逆に、食した宿主の方が栄養不足で衰弱死、餓死するという主客が逆転したバイオハザードが発生しかねない。
 私はまだ消化器系も強化しているのでさほどの危険はない(全く危険がないわけではない)が、普通の人間では危なっかしくて食べられたものではないだろう。自分からこれに手を出そうというのは余程の物好きか、あるいは他に何も食べるものがない緊急時くらいなものか。
 しかし、そんな極少数の物好きですら食指を動かすのを拒むに違いない第二の問題点が存在する。それは極めてシンプルかつ重要な命題である。

 ――不味いのだ。

 元々が無脊椎動物である。豚や牛などの家畜が属する脊髄動物とはそもそも生物としての種が異なる。
 筋肉がないので赤身がない。赤身の中にほどよく脂肪が混じった霜降り肉など望むべくもない。つまり、加熱によって脂肪分が溶けた肉汁も存在しない。
 そんなものを火にかけると、辺りには生ゴミを焼いたような生臭さと焦げ臭さが入り交じった悪臭が漂う。先程から私の周囲にあえて誰も近付いてこないのは、この悪臭が原因だという推察は蓋然性が高い。
 さらに、その悪臭を我慢してまで口に入れても、まるで焦げた古いタイヤを噛んだような、硬いゴムのような歯応えばかりが残る。焦げた部分の苦みとエグみばかりが舌を刺す。私は合成食塩を大量に振って食しているが、こんなものを食べるくらいなら、ここで購入可能な携帯食料を食べた方が遙かに精神衛生に寄与するであろうと確信している。

 ――理論上。

 あくまで理論上の思考からすれば、この食材の有用性に疑いの余地はない。いずれ発生するやもしれない飢餓から人類を救うという視点からすれば、この食材には有効利用の可能性が確かに存在する。
 とはいえ。残念ながら、現在の私が個人で可能な調理法では、この食材を好んで食べられるほどの美味へと仕上げるというのは限りなく困難である。
 さらなる改良を加えて、この食材を何とか食用に堪えられる領域に押し上げられるまでに必要であろう時間と労力、そして資源。
 この研究は潔く断念し、別の研究に振り向けることで得られるであろう成果の可能性。
 二つの相反する要素を天秤にかけ、今なお私は結論を出せずにいる。そして、結論を出しかねている愚者への罰であるかのように、このクソ不味い黒焦げの塊に塩を振りかけて食すという苦行を続けているのである。

 なお、蛇足ながら猛禽類の一種である梟は基本的に生肉を好む習性があることを付け加えておく。

 ――録音終了。

■□■□■□■□■□

周りには幾らでも美味しく食べられる物資があるというのに、それに背を向けてクソ不味そうな悪臭の漂う黒焦げの炭にしか見えない物体にしかめ面で塩をぶっかけて苦々しく口に運ぶお姉さん。
なお、白衣姿から変人の黄昏梟だろうと見当をつけられ放置されている模様。

呪文

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イラストの呪文(プロンプト)

jacket partially removed, heart in eye, burnt clothes, holding fishing rod, kanji, doujin cover, pentagram, tape gag, adjusting headwear, red socks, friends, cloud print, coke-bottle glasses, oral invitation, competition school swimsuit, barbell piercing, gradient legwear, prisoner, blood on breasts, wind chime, carrying over shoulder, tape measure, flaming weapon

イラストの呪文(ネガティブプロンプト)

入力なし
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