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怪獣と戦った犬

使用したAI Stable Diffusion
「ブッチ、いったいどうしたんだ」
海岸のほうを向いて吠え続けるブッチをなでながら、ステファノは言った。
ここはアルゼンチン南部の漁村マル・デル・プラタ、1916年4月26日のことである。小学校教師をしているステファノは毎朝愛犬のブッチを連れて散歩をするのが日課だった。だが海岸近くにさしかかったところで、いつもはおとなしいブッチが急に激しく吠えはじめたのだ。
「ひょっとして漁船が難破したのかもしれないな、行ってみよう」
気になったステファノは、海岸に向かった。ブッチは相変わらず吠え続けている。
「あっ、あれはなんだ?」
丘を越えて海岸を見下ろしたステファノは、波打ち際に見たこともない大きな生き物が横たわっているのを見つけた。ブッチはますます激しく吠えはじめた。
それは一見すると巨大なワニに似ていたが、クジラのようなヒレが4つ生えていた。胴体はエビのような甲羅に覆われていて、全長は約二十メートル、見たことも聞いたこともない巨大な怪獣だ。
見たところ怪獣はピクリとも動かず、
完全に死んでいるようだった。
「アザラシにしては大きすぎるし、新種のクジラかな?」ステファノはもっと詳しく観察しようと、砂に半分埋まっている怪獣の頭に近づいた。
と、そのときだった。死んだと思われた怪獣はとつぜん大きな口をクワッと開き、ステファノに襲いかかった!
「うわっ!助けてくれ!」思わずステファノが叫んだその瞬間、ブッチが怪獣の鼻先に噛みついた。思わぬ反撃に驚いたのか、怪獣は頭を激しく振り回してブッチを引き剥がそうとするが、ブッチは離れない。
「シャアアアッ!!」怪獣はしびれを切らしたかのように不気味な鳴き声をあげると、ブッチを鼻先にぶら下げたまま沖合のほうに体の向きを変えはじめた。逃げるつもりらしい。
「もういい!ブッチ、戻ってこい!」怪獣と愛犬の死闘をぼう然と見ていたステファノは、我に返り叫んだ。ブッチは怪物から離れると、沖合いに逃げる怪物にいつまでも吠え続けた。
 数日後、マル・デル・プラタの近くの海岸に奇妙な怪獣の死体が打ち上げられ、写真も撮られた。新聞に載ったその写真を見たステファノは、あの怪獣に間違いないと思った。

中⚫俊⚫著 「世間の怪獣」より(嘘)

呪文

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