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グランシュライデの”悪の神”はフェンテスを滅ぼすために同国の平和維持制御システムに侵入し、中枢部のマザーコンピュータを改変した。改変された”マザー”により破滅の道をたどるはずだったフェンテスはしかし、想像以上に多くの者達が”マザー”の操る平和維持制御システムをすり抜け、抗い始めた。しかも政府や上層部の人間ではなく民間人を中心に。

 機械と肉体の境界を突破した彼らにおいて、機械と肉体は対等な関係であった。彼らにとって機械やAIは人格を持った”他人”である。それは同時に機械の中で動くシステムが発する”命令”も、彼らにとっては”他人の言葉”程度のものにしかならない事を示していた。つまり彼らの多くは生まれながらにして強力なハッカーなのだ。

 「これでよし・・・っと」

 市民たちが悪の神によってシステムに埋め込まれた”悪意”を次々とデバッグしていく。多くの市民が同時にハッキングを行う事は多大なエネルギー消費につながるが、HAドライブとセントレイクからの水資源のおかげでエネルギーが枯渇する心配はない。だがしかし、残りあとわずかと言う所で強力な侵略性ウィルスが発動し、ハックした市民の生体電子脳を破壊し始めた。ヴァーチャルの世界でウィルスと熾烈な争いを繰り広げる市民たち。そんな中、フェンテスの中でもとりわけ天才と名高い一人の少女の脳内に何者かの声が聞こえて来た。

 『…ソコニイルノハダレ?』

 少女は声のした方向を見ると、一基の作業用ドローンが静かに浮いていた。ドローンのカメラが少女を捕らえている。彼女はその存在が何者であるかを瞬時に悟った。

 「”マザー”…?」

呪文

入力なし

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