りんご寓話
その熟れたあかいろ
芳しい甘味
けれど
りんごはりんごをたべられない
かれには口がない 口惜しい
かれには歯がない 歯がゆい
かれには舌がない シカタガナイ
りんごはりんごのむしをあいしました
むしはかれを食べてくれる
むしはかれを感じてくれる
むしは知っててくれる
かれのしらないりんごを
けれどもある日、春が来て
むしはどこかに飛んでいきました
のこされたりんご
のむし喰い穴に風が吹いて
ぴぃひょろぴぃひょろ
りんごはうたをかなでます
風のうたにほだされて
かどうかはわかりませんが
りんごはむしに食べられたあの身こそが
自分だったとおもいました
それで
りんごはりんごのむし喰い穴をあいしました
でもむし喰い穴は
穴です
穴とはなにもないところのことです
むし喰いりんごはかなしくなって
自分を食べたむしのことを思い出しました
そのむしを恋しくおもいました
恋しくて恋しくて
かなしくてかなしくて
むし喰い穴と風のかなでるうたは
りんごの泣き声になりました
りんごにはのどがなかったので
りんごはひとりでは泣けなかったのです。
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2件のコメント
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哀愁を感じる、りんごちゃん
はい、そうなんですよ~、そもそもこのりんごちゃん、秋に収穫されずに木に残ったままのりんごちゃんなんです。
まわりに仲間もいませんし、かわいそうですね(´;ω;`)
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