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※こちらの視点と同じ人物の話の続きです。
https://www.chichi-pui.com/posts/207a1c86-9b9c-4a5d-b8d4-18ba063f0cb4/



仕事に困ってとある貴族から密偵の仕事を請け負い、自分の地元の領主邸へ忍び込んだ所であえなくご本人登場。

逃げることもできないまま説得のような良いように丸め込まれたようなでいつの間にかここの下働きをすることになった。

給金も『迷惑料を差っ引いた分』で他の使用人より少額らしいが貰えるし住み込みで寝る場所にも困らない。

本格的に腰を据えてここで働いてもいいかなと思っていたある日、使用人部屋で休憩していた所へ領主自ら訪ねてきて普段自分は入ることのない領主様用ダイニングへ連れてこられた。

自分の働きぶりが良い悪いは別として、少なくとも咎められるような悪事をやった覚えはない。

新しい仕事を指示されるにしても他の使用人を通すはずだし、と全然見当もつかないまま後をついて部屋へ入る。

初めて入る領主様のダイニングルーム。

他の設備居室の様子から予想はできていたが、ここも貴族にしてはだいぶ質素で豪華な調度品なんてものはほとんど無い。

が、それよりもテーブルにある小さめのホールケーキが目に入った。デザート、だろうか。

なんて思って突っ立っていると領主様は同じくテーブルに置いてあった花束を抱えて私へ差し出した。

――は、これは、何でしょうか?

「何って、あなた、今日が誕生日なんでしょ?」

本当に間抜けな顔をしていたと思う。

使用人の誕生日をいちいち祝っている貴族なんか、聞いたことが無い。

「当家は少ない人数でどうにか回してもらってる有様ですからね。誕生日くらいは労をねぎらってあげたいのよ」

ずいと目の前に出された反射で受け取ってしまう。

しかし、なんというか、あまり祝っているようには見えない独特な取り合わせの…。

「一応、この花は貴方たちにやってもらってるのとは別の花壇でわたくしが世話をした分よ。まあ、花を買うお金を節約したいのもあるんだけど」

口に出さなくて良かった。

ありがたく頂戴します、とだけ答える。

「他の皆も仕事がひと段落したらばらばらと来るはずだからそうしたらケーキを食べましょうか。ま、座ってなさい」

私を半ば無理矢理に椅子に座らせ、なんだか楽しそうに小皿をテーブルに並べ始める。

なんだこの人。

私より年下のくせに武力も知略も威厳まである恐ろしい女かと思えば、市民階級の娘みたいなことまで気にせずやる。

先が見えない弱小貴族にも関わらず彼女が正式に当主として家を仕切り始めて以来、誰も辞めた使用人が居ないらしいのはこういう所から来ているのかも知れない。

「どう?当家をうまく探れてたら『使用人の誕生日をお祝いしてます』なんて重大機密持ち出せてたかも知れないわね?」

ちくり、と。

うっかり、棘の部分を持ってしまったらしい。




#君に花束を _(underline)様ユーザ主催企画参加分です。
うーん、時間が無くてふわふわした話になってしまったけど、何となくお嬢様の人となりが伝わればいいかなーー。


こちらの花のセンス微妙お嬢様は #誇りは蜂蜜で塗り固めてある タグで纏めています。
よろしければ以下のリンクからごらんください。
https://www.chichi-pui.com/illustration/posts/tags/誇りは蜂蜜で塗り固めてある/

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