祝杯
世界の崩壊と再構築。
すべてを終えた少女は、ふぅっと小さく息を吐いた。
「……まぁ、今回も何とか元通りね。」
数字を操り、世界を再び形作るのも慣れたものだ。
ちょっと前までは緊張していた作業も、今やすっかり日常になってしまった。
「さて、無事に終わったことだし、祝杯でもあげましょうか。」
少女は冷蔵庫を開ける。
そこには、なぜか大量のアサヒスーパードライがぎっしり詰まっていた。
「……あれ? ちょっと作りすぎちゃった?」
再構築の際に設定を間違えたのか、どうやらこの世界は妙にビールに恵まれてしまったらしい。
「まぁ、いいわ。飲めば問題ないわよね。」
缶を取り出し、プシュッと開ける。
ゴクゴクと喉を鳴らしながら、冷えたビールを流し込む。
「ぷはぁ……!」
苦みの中に広がる爽快なキレ。
暑くもないのに、なぜか体がスッキリしていくような気がする。
「……ん? せっかくだし、前の世界にあったビア・タワーズでもやってみようかしら?」
少女はふと、テーブルの上にビールの缶を積み上げ始めた。
1本、2本、3本……慎重に、バランスを取りながら重ねていく。
172本目を乗せたとき、彼女はふっと笑った。
「簡単だな。」
そう呟いた瞬間――
ガシャァァァン!!!!
見事なまでに崩れ落ち、ビールが床一面に広がった。
「…………。」
少女は静かに数字の羅列を呼び出した。
「……リセットね。」
こうして、再構築の祝杯はもう一度やり直されるのだった。
呪文
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