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越夜隊のシンカロンである少女イヴ。
彼女が所属を隠して潜入しているのが、黄昏梟のテリトリーにあるマッサージ店「癒しの手」だ。

最初の客が入ってくる。黄昏梟の女性研究員だ。イヴは丁寧に挨拶をする。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなマッサージをご希望ですか?」
女性は疲れた表情で答える。「肩と首をお願いします。最近、野外調査が立て込んでいて…」
イヴは頷き、女性をベッドへと案内する。マッサージが始まると、イヴの手は的確に筋肉の緊張をほぐしていく。その動きは流麗で、まるで密やかな儀式のようだ。
「あぁ、そこです…」女性が小さく呻く。イヴの指先が、彼女の肩甲骨の下の固まった筋肉を見つけ出したのだ。
イヴは表面上、全神経を施術に集中させているように見せかけながら、さりげなく会話を始める。
「内勤の方が野外調査とは珍しいですね。この凝り具合は…、かなりご苦労されてるようですね!」

女性は少し警戒しながらも、疲れからか、言葉が漏れる。「ええ…『落着点』の調査よ。慣れないフィールドワークで体中が悲鳴を上げてるわ。」

イヴの心拍数が上がる。これだ。彼女が求めていた情報の糸口が見えた。

「落着点…聞いたことがあります。でもすみません、詳しいことはよくわからなくて。大変なんですか?」逸る心を抑えて、素知らぬふうにイヴは尋ねる。

女性はため息をつく。「正直、思うように進んでないの。拠点から遠いし、他の勢力の妨害もあるし…」
イヴは黙々とマッサージを続けながら、その情報を頭に刻み込む。「妨害、というと?」
「旅人たちは物見遊山気分で大切な遺構を荒らしてしまうし、夜になると…」女性は言葉を濁す。「危ない連中が徘徊してて、作業どころじゃないの」

(それは、越夜隊の先輩たちのことかしら…)

「それは困りましたね。でも、急ぐ必要があるんですか?」

女性は少し躊躇した後、小声で続けた。「実は…落着点には危険なものが封印されているの。それを早く完全に封じないと…」
イヴは、その「危険なもの」が『神の繭』を指していることを即座に理解した。

「そうだったんですね。でも、みなさん頑張って調査されてるんでしょう?」
「それがね…」女性は肩を落とす。「まだ予備調査すら完了できてないのよ。このままじゃ…」

マッサージが終わると、女性は少し表情が和らいで店を後にする。イヴは丁寧にお辞儀をし、「またのお越しをお待ちしております。お気をつけて!」と告げる。

扉が閉まると同時に、イヴの表情が一瞬だけ硬くなる。しかし、すぐに柔らかな微笑みを取り戻す。彼女の脳裏では、得た情報の分析が既に始まっていた。
日が暮れ、店じまいの時間が近づく。イヴは最後の客を見送りながら、今日の成果に密かな高揚感を覚える。落着点の調査状況、そして神の繭の存在。これらは、この任務の決定的な転換点となるだろう。

店の鍵をかけ、イヴは静かに自分の小さな部屋へと向かう。ニューナゴヤ・シェルターの夜は、人工的な静寂に包まれている。彼女の足音だけが、無機質な廊下に響く。
部屋に入り、ドアを閉める。カチリ、と鍵をかける音が、イヴの内なる変化の引き金となる。

彼女の表情が一変する。柔和な微笑みは消え、代わりに昂揚感に満ちた表情が浮かぶ。イヴは深く息を吐き出し、ゆっくりとロザリオを手に取る。その瞬間、彼女の中に抑えきれない激しい感情が湧き上がる。

「支配者様…」

イヴの囁きが、静寂の中でかすかに響いた。

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続きます!

前の話はこっちね。
影の舞踏 - シンカロン・イヴの潜入任務(1)
https://www.chichi-pui.com/posts/23724588-3631-495a-8e86-449abbbcab87/

次の話はこっち
影の舞踏 - シンカロン・イヴの潜入任務(3)
https://www.chichi-pui.com/posts/92e77dea-ba9a-47d3-b34b-b36a3c8f49c2/


ぶっちゃけこの連作一連で、このマッサージしてる絵がいちばん難しかった…!あとでメイキングをポストするわ

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メイキング!
https://x.com/SaliaYuhna/status/1819754005452804178

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