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【マタタビ】22.越夜隊の修道女

使用したAI その他
(前の話)
【マタタビ】21.落着点
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「うあぁぁぁぁ!」
 
 グリルスは、グリレを失った悲しみと怒りを露わにした。そして、大蛇に向かって跳躍し、頭部を蹴り飛ばす。バネのように強力なグリルスの脚力は、大蛇を宇宙ステーションの壁まで吹き飛ばした。グリルスは、さらに追い打ちをかける。

 グリルスと大蛇の戦いに気を取られていると、背後から強い視線を感じた。振り返るとそこには、蛇のように鋭い目をした二つの眼球が浮かんでいた。

「逃げろ、シロ!」

 俺は、咄嗟に叫んだが、遅かった。

「動け・・・・・・ない」

 シロを見ると、二つの眼球を見つめた姿勢のまま、体が硬直していた。まるで、蛇に睨まれた蛙のように。クスクスとした笑い声と共に、暗闇の中から黒い目隠しをした修道女が現れた。

「はじめまして。わたくし、越夜隊・白の聖歌隊所属フィズィと申します」

 フィズィと名乗った女は、両手を胸の前で合わせ丁寧にお辞儀をした。

「皆さん、この場所まで案内ご苦労様でした。お陰様で、神の繭の在処を知ることができました」 

 フィズィは、顔を上げにっこりと笑う。

「シロに何をした?」

 俺は、フィズィと名乗った女に問いただす。

「私は、“視た”だけですよ。ただ、私と目を合わせると、弱き者は体がすくんで動けなくなってしまうのです」
「クロ……助けて……」

 シロは、かろうじて唇を動かして声を出す。

「安心しろ、シロ。俺が助けてやる!」

 そう言って、俺は戦闘態勢を取る。俺の体は自由に動かせるようだ。あの目で動きを止められる対象は一度に一人だけなのだろう。

「無理ですよ。私の“邪眼”から逃れることはできません」
「その目で、俺たちのことをずっと見ていたのか?」
「はい、そうです。私、目はとてもいいんですよ」

 そう言って、フィズィは、黒い目隠しを外す。そこには、あるはずの眼球がなく、ぽっかりと2つの黒い穴が空いていた。グリレが、肉体の拡張や改造は、越夜隊・白の聖歌隊の専売特許だと言っていたが、こいつは、自分の眼球を遠隔操作できるように改造したのだろう。なんともおぞましい。

「私に任された任務は、神の繭を見つけて復活させることでした。ですが、与えられた情報は、根も葉もない噂話だけ。だから私は、観察することにしたのです。私が噂話を広げると、瞬く間に各地に広がり、黄昏梟や旅人の方々が面白いようにニューナゴヤに集まってきました」

 星の樹の噂話を広めたのは、越夜隊だったのか。そうとも知らずに、俺たちはのこのことニューナゴヤにやってきたわけだ。

「そして、その様子を遠くから眺めておりました。そうしたら、ルースト005に向かうあなた方を見つけたのです」

 フィズィは、胸元で小さく拍手をする。

「その後は、あなた方の旅の様子を全て視させていただきました。あなた方は、ルースト005の巨大迷宮に入り、数々のトラブルを経て、最深部のサーバルームにたどり着いた。とても見ごたえのある冒険でしたよ」

 最深部のサーバルームで視線を感じた気がしたが、俺たちは、この眼球に見られていたのか。

「そして、あなた方は私に、神の繭の在処を見せてくださいました。ですので、私たち越夜隊は先回りをし、神の繭を復活させるための儀式を始められたのです」

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(次の話)
【マタタビ】23.復活の儀式
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