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孤独な女帝

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「もう良い。ここまでじゃ。」皇后の住まいである離宮で、そこの主人である彼女は護衛の彼にそう告げた。

数日前、南部地方で発生した民衆の反乱は、国の全土に広がり、遂に都にまで到達した。怒れる民は圧政の元凶である皇后を断罪するため、血眼になって彼女を探していた。原因は彼女の亡き夫である皇帝にあった。子供のできない彼女を離宮に押し込め、愛人達と共に性欲と贅沢の限りを尽くした。また中央の腐敗は地方にも伝播し、強欲な領主達は、不当な税を民衆に課せた。それは民の暮らしを圧迫し、至る所で餓死者が発生した。不摂生が祟り皇帝が死に、彼女が政権を握った時には、民衆の怒りは抑えられないところまできていたのだ。

離宮は色とりどりの花に囲まれていた。「これはのう。妾の故郷で咲いていた花じゃ。ただ、花を愛でるだけで幸せだったのに、何故か陛下に見染められ妃となり、陛下亡き後は政に携わるようになった。田舎娘が国を背負うことになるのだから、美しすぎるというのも罪じゃのう。」花畑に生えていた花を摘んで、彼女は寂しげに微笑んだ。

確かに彼女の政治は苛烈で性急であった。内紛を恐れ、跡目を巡って争う愛人と皇子達を粛清した。また異民族の侵略に備える名目で、地方領主の財を没収し大量の武器を揃えた。それが裏目となる。力を失った領主は民衆の不満を抑えることができず、備えていた武器を奪われ打倒された。そしてその火が都まで及ぶこととなった。全ては彼女の計画した通りに。

「まさに傾国の悪女じゃな」自虐的に笑う彼女を彼は黙って見つめていた。「すまぬな。もう妾では、そなたの命を救うことはできぬ。逃げよと何度も言ったのに、バカな奴じゃ。だが、その忠義に報いたい。何か妾にできることはないか?」そんな主人の労いに、彼は表情を変えないまま「それでは申し上げます。これまで私は武一筋で生きてきました。恥ずかしながら女の温もり、柔らかさを知りません。人生の最後に貴方を抱かせてください」と答えた。一瞬、驚いたような顔を見せた彼女であったが、「お主にも色があったのじゃな。」と笑い、彼に身体を預けた。そんな彼女を彼は優しく抱擁した。その震えが止まるまで。

しばしの時間の後、身を離した彼女は、彼に向き直った。「今日、この国は崩壊し、民によって新たな国が誕生する。そして全ての責を背負わされ、妾は悪女として罰せられるだろう。それは良い。それが為政者の定め、覚悟の上じゃ。」と為政者の顔となりそう告げた。だが、その顔が泣き笑いのような表情に歪む「じゃが、死体を弄ばれ、首をさらされるのは我慢ならぬ。これは女としての、せめてもの思いじゃ」そして彼に懇願する。「そなたに頼みがある。これより妾は、火を放った後に自害する。妾の身体が灰になるまで、敵を通さないでほしい。頼めるか?」彼は短く「御意」と応えた。再度、二人の視線が交差する。彼女は満足げに微笑むと宮の奥に消えていった。やがて、焦げ臭い匂いが漂ってきた。そして、何かが倒れる音を聞いたとき、一瞬だけ、彼の顔が深い悲しみで歪んだ。

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