王女エリス
『……ん? あれは、もしかして……奴隷商会の、馬車――? しかも、あの紋章って』
たまたま北方へ、外交の仕事で馬車で移動していた第四王女エリス。
偶然見つけてしまったその馬車は、なんとあの悪名高い名の知れた奴隷商会の紋章だった。
王女エリス
(何故、このような辺境な場所に? この近辺には、確か小さな村があった筈――)
彼女は馬車に乗りながら、考えこんでしまう。
やはり、奴隷商会というのが、どうしても気にかかるようだ。
王女エリス
(ま、まさか……村の人たちを奴隷に――? いえ、今のままでは情報が足りませんね。でしたら、まずは……調べてみましょうか――)
王女エリス
「申し訳ございません。少々ここで待っていて頂けますか? お父様(国王)に、伝令しなくてはなりません」
彼女は、御者に馬を止めるよう指示し、相手の馬車からこちらが気付かれないよう、隠蔽魔法を馬車全体にかけた。(警護する騎士たち数人も含め、全てに魔法がかかった状態)
そしてすぐに、現状を国王に伝えようと〝通信魔法〟を使い、今の状況を報告した。
数分後――
エリスは騎士たちに命令を下す。
それは……〝一歩も動かず、そのまま待機せよ〟と――
王女を護衛する立場である騎士たちからしてみれば、それは普通であれば、受け入れ難い言葉だった筈。
しかし、不思議な事に彼らは王女の言葉に素直に従い、反論する者が誰一人もいなかった。
一体、何故……?
彼女は正義感溢れる、とても強く優しい王女だと、多くの国民に知られている。
今回の状況からして、当然だが《奴隷商会》に関係する者がいるとなれば、王族として見過ごす事はできない。
騎士たちに命令をした後のエリスは、そのまま相手の馬車の方へと、一人で歩いて行った。
一歩……また一歩と――
もう少しで辿り着ける所で、奴隷商会の用心棒らしき男の二人に見つかってしまった。
男(リーダー)
「へへっ、なんだぁ? こんな辺鄙(へんぴ)なところに、極上のぺっぴんさんがいるじゃねぇかぁ。がははっ! アンタ、とても可愛いじゃねぇか。へへ、こいつなら今までで一番高く売れるかもなぁ! さぁ、俺たちに付いてくるんだ! 大人しくしていれば、痛い目に遭わなくて済むかもしれんぞ!?」
男(下っ端)
「リーダー! さっさと捕まえてしまいましょうよ! そうすれば、俺たちも会頭から褒賞がたくさん――」
二人の用心棒の男たちは、エリス王女をまるで品定めするかのように見つめ、喜んでいた。
しかし……
不運な事に、彼らはすぐに思い知る事になる。
彼女がヴァレンツィア王国の中で唯一、軍事大陸で様々な功績を上げ、名を遂げた〝軍神エリス〟だという事を――
王女エリス
「……はぁ、そうですか――」
エリスは大きくため息をついた。
そして、魔素(マナ ※1)がどんどん高まっていく。
(※1 通常では魔素は《ロド》と呼ばれているが、彼女は禁呪を使用する際に発生する魔素の上位互換、高純度の魔素《マナ》を使える)
王女エリス
『それがあなた達の、最期の言葉ですか? 宜しい……では――消滅(き)えてもらいましょうか』
男(リーダー)
「な、なんだ!? 急に魔力が上昇してっ――く! こいつ! 魔法が使えるのかっ!?」
リーダーの男は、彼女の魔法を警戒し、防御態勢を取った。
だが、次の瞬間……それは、まったくの無意味な行動であることが、後になって理解することになる。
王女エリス(詠唱中)
『――白き精霊よ。太古より禁じられし、白炎(はくえん)を呼び戻さん……焦熱の閃光、滅鎖の人形、我の魔素(マナ)を喰らい、汝の楔を解け――』
男(リーダー)
「な、なんだそれはっ!? ぐ、ぐぐぬぬ……っ!」
王女エリス(詠唱完了)
『これで、終わりです……禁呪 第四節〝古代精霊魔法〟――〝ホワイトノヴァ・デフミリネイション〟』
ピカッ!
ズォオオオーーーン!!
男たち
「「なっ! ぐぎゃぁあーーー!!!!」」
用心棒の男二人は、一瞬にして姿が消えてしまった。
――――
――
王女エリス
「ふぅ、これでもう大丈夫でしょう。さ、馬車を調べましょうか」
まるで何事もなかったかのように、平然としながら相手の馬車の方へと向かう。
古代兵器にも匹敵する威力を持つ、魔法の中でも最も強力である〝禁呪指定されている古代精霊魔法〟――
それが使えてしまうのだから、エリスってとんでもないのでは……? Σ(・□・;)
実は先ほど、通信魔法で国王に伝えていた事は禁呪を使用する事を許可もらう為である。
威力が凄すぎるが故に、使用制限があるのだ。
そんなとんでもない魔法を使う事を選び、実際に使ったのだから、周囲の被害も尋常ではないだろう。
しかし――それは、一般論として、である。
不思議な事に彼ら以外には一切、被害がなかったのだ。
これは一体どういうことだ?
自然も破壊された筈なのに、再生している……
これも彼女の力なのだろうか。
王女エリス
「さて、と……馬車の中を確認しましょう」
彼女は馬車の中を確認しようと、裏側へと移動する。
すると――
王女エリス
「っ! こ、これはっ……こんなに小さい女の子に、なんて酷い事を――とにかく、早く治療を」
中を確認すると、傷だらけの美少女(?)が気絶して倒れていた。
恐らく先ほどの彼らにやられたのだろう。
服もズタズタになっていた。
他にもたくさんの人が気を失っていた。
王女エリス
「魔法士団長! こちらに! 少女が馬車の中で怪我をされております! すぐに治療をっ! 急いで下さい!!」
果たして、その少女は助かるのだろうか……?
続く。
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■前話はこちら
『幼女の寝起き』ユイ・リフテシアは、両親から奴隷商会に売られる
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【作者コメント】
・どうも、いつもお世話になっております<(_ _)>
今回はオリジナルアニメ《魔戦物語》に関連するストーリーの流れになっております。
実は奴隷に売られた女の子は、〇〇の子かも? 何故か平民なのに苗字もありますしね(*´▽`*)うふふ
さぁて、これからどうなる事でしょうか?
・イラストについてアニメーションのように、魔法詠唱をメイキング形式で分けてみました☆
一枚一枚に工夫しながら、作ったので楽しんでくれたら嬉しいです!
・毎度お馴染み魔法エフェクトはペイントソフト「sai」、文字入れ「Power Point」を使用して作ってます!
ありがとうございました<(_ _)>
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