ああ、どうか森よ、この祈りが届くのなら
結論から言えば第37小砦は崩壊した。
いつの間にか潜り込んでいたレスランドの別働部隊に挟撃されたのだ。
エルフェアルでは小動物などを駆使した斥候による索敵を主としているが、どうしたものか包囲網を出し抜いたようだった。
弓による牽制からなんて考えていた彼女たちはあっという間に敗走に追い込まれてしまっていた。
救いはその時点ではまだ全員逃げ出せた、と思われることだけだった。しかし逃げ出すうちに一人一人と離れ離れになってしまった。
新兵の一人であるエルザはそうしてはぐれてしまった。
経験の浅い彼女にとって初めての戦場は何が起こったのかわからないままだった。森の中ならどんな敵でも撒いて逃げることが出来る自負があったが、いざ命の危険を感じるととてもではないが余裕なんてものはなく……気が付けばたった一人だ。
噂によればレスランドはエルフを奴隷として国に連れて帰る風習があるのだという。ようやく追っての気配がしなくなったところで不安からかエルザはそんな話を思い出してしまった。
「どうしてこんなことになっちゃったんだろう……」
疲れ果てて森に座り込む。どうしようもない行き場をなくした感情が涙となって溢れ出るのをエルザは止めることが出来なかった。砦の方で大きな煙が上がっているのが見えた。レスランド軍が燃やしているのかもしれない。火の粉が舞い上がっているようにも見える。森が焼かれていることにエルザは自らの身が焼かれるような気分になった。
訓練は辛かったし、森の巡回はそんなに面白い仕事ではなかった。それでもそこはエルザの、エルザたちの居場所だったのだ。
「誰か助けてよう……」
慣れ親しんだ森の中とは言え、たった一人でどうしていいのかわからなくなったエルザはただ誰ともなく助けを呼ぶことしかできなかった。もう疲労で足は動かない。精神的にも肉体的にも限界を迎えていた。もう視界にはエルフェアルの森しか入らない。子供の頃、母に森への感謝を忘れないようにときつくしつけられた思い出がよぎって
、エルザはそのままうわ言の様に森へ祈りはじめた。
「ああ、どうか森よ、この祈りが届くのなら……」
tips
エルフェアルの森では木々を通して簡単な伝言や記憶に残る風景を伝達、共有することが出来る。
それは同じエルフだけに届くとは限らない。
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