ミア
『いくよ? ミリィ――これが、私からの……最後の、魔法の授業だ』
真剣な表情でミリィを見つめ、魔力を練り出す師匠(ミア)。
そして、彼女の最大魔法が解き放たれる。
――――
――
~ミアの家~
孤児院から引き取られてから数年後……
彼女は、今年でちょうど十歳になった。
昔から自分で食料を調達していた経験もあり、ここでの生活でも、日課になっていた食料調達を率先して手伝っていた。
幸い、森の中に家がある場所なので、前の孤児院の時よりも食材(獣含む)が豊富だ。
最初の頃は、まだ幼く小さかった為、ミアが料理を担当していたが、今は弟子であるミリィが作っている。
そして今日も、夕食の用意をしていたミリィ。
ミリィ
「よっし、できた♪ んふふっ、今日も美味しくできたぞ(*´▽`*)ぬふぅ」
味見をしながら、味に納得したのか心の中でガッツポーズをするミリィ。
森の中とはいえ、質素な夕食ではない。
家の前にはちゃんと畑はあるし、それに魔法による温度調節が可能な野菜を栽培している為、年中新鮮な野菜が収穫できる。
魔法を覚えると、とても便利ですねΣ(・ω・ノ)ノ!
ミリィ
「さてっと、師匠を呼んでこなくちゃっ――」
彼女は、夕食の準備ができた為、ミアを呼ぶことにした。
コンコンッ! (ドアをノックする)
ミリィ
(師匠~、ご飯できたよ? 一緒に食べよ?)
すると、自室の中で作業をしていたミアは、彼女の声に気付く。
ガチャッ! (ドアを開ける)
ミア
「いつもありがとね、ミリィ。それじゃ、食べよっか♪」
ミリィ
「うん! (≧▽≦)/」
そして、二人は食卓へと移動する。
移動して戻るとテーブルには、ご飯からサラダから肉料理まで、多彩な種類の料理が目の前にあった。
二人はそれぞれの椅子に座り、手を合わせて食べ始める。
ミリィ
「師匠~、どぉ? 美味しい?(。´・ω・)?」
ミア
「――ん……ゴクッ……ん、うん! すっごく美味しいよ♪ よく頑張ったね、ミリィ。最初に来た時よりもずぅ~っと上達してるよ」
ミリィ
「ホントッ!? Σ(・□・;) やったぁ~\(◎o◎)/!」
ミリィはとても喜んだ。
自分の育ての親だった両親は、今も見つかっていない。
……けど、孤児院の院長や、今はミアが里親として、母親のような存在になっていた。
夕食も食べ終わり、ティータイムを満喫している二人。
こんな平和な生活が、長く続いて欲しいと、密かに願っていたミリィ。
しかしそれは、突然と消えてしまう事になる。
ミア
「……ねぇ、ミリィ? ちょっと、いい?」
ミリィ
「ん? なぁに、師匠? そんな、真剣な表情をして――」
もう一緒に暮らして数年経っている為、お互いの心境を少しずつ理解できるようになっていた。
そして今のミアの表情から、何か大切な事を伝えようとしている事に気付く。
ミア
「……――」
ミアは、テーブルに飲んでいたコップを置き、しばらく沈黙してしまう。
何か深刻な事でも、あったのだろうか……――?
ミリィ
「? ……師匠? どうしたの? なんか、顔色が悪いよ? 熱でもあるの?」
ミリィは、ミアの魔法訓練の成果もあって、相手の魔力の流れを読み取る事ができるようになっていた。
それは病気や、体調が悪くなった時も同様に、体内の流れを読み取れるのだ。
……まさか、ミアは――
そして、しばらく沈黙が続いた後……
その重苦しくなった口から、最期の弟子であるミリィに、自分が抱えている〝とある事〟を話した。
ミア
「……ミリィ? 私、ずっと言わなかったけど……実は、ね……――私は《病気》なの――それも、不治の病に侵されてるの……私の予感だと、あと一日と、もたないかもしれない――」
ミリィ
「……え、え? し、師匠、一体なにを言って――」
ミリィは絶句してしまう。
突然告げられた、師匠の……いや、母親(ミア)の死。
信じられないといった表情をしてしまうミリィ。
次の言葉が、うまく出て来なかった。
ミアは、続けてミリィに話す。
ミア
「だから、ね……そろそろ、良いと思うんだ。今のミリィ、あなたなら必ず習得できると、私、信じてるから――私の全てを、あなたに……ミリィに、託すわ――」
自分の身体の事は、自分がよく理解している。
実は、孤児院をミリィを引き取る前から決めていた事だった。
〝この子を、私の最期の……弟子にしよう〟と――
それはまるで、我が子を育てあげるかのように、自分の生きた証を託すようだった。
病気といっても痛みがある訳ではない。
ただ、年々――〝魔力量が減少し続けている〟のだ。
かつて世界最強だった魔法士(魔法使い)のミアも、今やミリィの魔力量には遠く及ばない程まで、弱くなっていた。
それは、ミリィも薄々は感じていた。
いつも魔法訓練の時は、疲れた仕草を見せなかったのに、ここ最近、肩を大きく動かして息を切らす仕草を目にするようになっていたからだ。
ミリィ
「そ、そんな重大な事っ! 何で今まで黙ってたのっ!? な、なんで、なんでなの……師匠――――お、母さん……そんなの、嫌だよぉ(´;ω;`)ウッ…」
ミア
「っ! ミリィっ……――」
ミアは、母性としての本能に逆らえず、我が子(ミリィ)を強く抱きしめた。
ただ少しだけの罪滅ぼしなのか、今日は彼女の側にいようと決めた。
ミア
「ご、ごめん、なさい……ミリィ。あなたに、ツライ想いをさせて……ダメな母親で、ごめんなさい――」
今日のミアは、いつもよりも優しいお母さんだ。
ミリィは今だけは安心して、抱き返して今日は一緒の部屋に寝る事にした。
まるで、今日が最後になるかのように……
ミア
「……おやすみ、ミリィ――また、明日、ね」
そして、二人は眠りにつく。
翌日――
先に起きたのはミリィだった。
自分を抱きしめながら、すぐ隣で寝ているミア。
寝息を立ててまだ寝ていた。
ミアの寝顔をじっと見つめるミリィ。
ミリィ
(これが最後なんて……絶対に嫌だ! 私が……私が必ず、完成させてやるんだから! あの、魔法を――)
ミリィは、以前から万能回復魔法の魔法開発の研究を、独自に進めていた。
それはミアですら知り得なかった事――
果たして間に合うのか……
そしてミアも目が覚め、二人は仲良く朝食を取る事にした。
今日は特別な日……
それはお互いにわかりきっている事だった。
朝食を二人とも食べ終わり、食器を片づける。
ミア
「それじゃあ、移動しよっか」
ミリィ
「……(こくり)」
ミアの問い掛けに、ミリィも頷いた。
いつも使っている、家の近くにある結界を張った魔法の訓練場所へと移動する。
到着と同時にすぐにお互いが向き合い、周囲には緊張感が漂っていく。
魔力を高め合い、そして――
始まった。
ミア
『いくよ? ミリィ――これが、私からの……最後の、魔法の授業だ』
ミアは、自身が持てる全ての魔力を、この一撃に全てを込める事にした。
病気による衰退なんて関係ない。
魔法士の師匠として、彼女(ミリィ)の母親として、この瞬間だけは限界を超えて、全力を出し切る。
そう覚悟を決めていたミアは、魔素(マナ)を集束させ、膨大な魔力となり、その力を覚醒させていく。
ミリィ
「す、すごい……これが、お母さんの……師匠の、本気――」
ミリィは、目の前に起こっている出来事を、目に焼き付ける。
いつも見よう見まねで覚えてきた、ミアの魔法。
ミリィの、相手の魔力を読み取り、魔法の理論を組み立てるそのセンスは抜群、まさに天才だった。
そして、ミアの刺激に呼応するかのように、ミリィも魔力を最大限に引き上げていく。
それを見た、ミアはとても嬉しそうに胸が高鳴っていた。
その表情はまるで、我が子の成長を……――
目の当たりにできた瞬間を、最期に見る事ができた。
ミア
(あぁ、ミリィ……やっぱり、私の目に狂いはなかった。今のあなたは――確実に、私を……超えているのね)
そして――
お互いの魔力が最高潮に達した。
ミア
『……水精霊よ! 大気の水を集束し、我が身に集え! 氷精霊よ、我の魔力を喰らい尽くし、汝の枷を外せ! ……永劫たる激流の凍獄の檻、敵の全てを凍らせよ――』
すると、ミアのまわりには水が集まり出し、それが急激に冷えて凍っていく。
これがミアの最も得意とする《複合魔法》――
現代でただ唯一、彼女だけが習得している水属性と氷属性を混ぜ合わせた最上級クラスの魔法だ。
ミア
『くっ、がはっ……(や、やっぱり今の私には、少しキツイわね……でも! やらなきゃっ!)――――氷結凍土広領域最上級魔法――《アイクシル・ゼロ》!!』
ミアは口から血を吐き、苦しみながら魔法を発動させる。
すると、ミアの周りがものすごい早さで温度が冷やされていき、全てが凍っていく。
それは森や木、植物から動物まで……大気の全てが、凍りと化していった。
ミア
「ぐっ……さ、さぁ、どうするミリィ!? これを、払いのけて見せなさい!!」
倒れる寸前の身体を振り立たせて、自身に身体に鞭を打つ。
そして煽るように、ミリィに向かって叫んだ。
これは師匠としての、最期の、いわば彼女からの〝応援〟だ。
内心では打ち砕いて欲しいと、願っていた。
そして、ここでミリィもそれに応えるように、魔力が覚醒する。
身体から尋常ではない、異常な魔力量が溢れ出していく。
しかし、それは――
普段のミリィの魔力の姿ではなかった。
この時、ミリィは一時的に意識を失ってしまう。
するとどこかからか、声が聞こえてきた。
???・????
(まったく、このような所で死なれては困る。我が少し、力を貸してやろう)
すると、意識を失った筈のミリィは再びミアに向かって向き合い、人間が持ちうる最大魔力量の限界を突破してしまった。
ミリィ(?)
「……我は闇を司る、始まりの原祖〝霊神の一柱〟―― 闇の精霊女王なり。全ての精霊達に命ずる。自らの血肉(霊素)を喰らいて、その力を我に捧げよ。解き放て! 灼熱の業火による破壊の如く、一閃の貫きを我が手にっ!」
驚いた事にミリィ(?)は、人間界の魔素(マナ)とは異なる、精霊界の霊素(エーテル)を身に纏っていた。
ミア
「なっ! ミ、ミリィ……!? あ、あなた、その姿は――ま、まさか、精……霊――!?」
ミリィ(?)
「いくよ、師匠――これが私の……最強にして最大の魔法! くらぇぇえーー! 灼熱閃光極大魔法〝イクスティンクションーーフレアァァアーーーーー〟‼」
グォオオワァアアアー!
ミリィが放った一撃は、ミアの魔法(氷)を打ち消して、周囲に張った強力な結界魔法も貫いた。
ミア
「っ! な、私の魔法が、一瞬にして蒸発して……っ! きゃぁあーーー‼」
ミアは、その威力に驚愕してしまう。
幸い、ミアにはダメージはなかったようだ。
ミリィ(?)のお陰なのか、その一撃は一直線にミアを目掛けて向かっていったが、当たる直前に魔法の軌道が変わり、空に向かって遠くへと消えていった。
ミア
「う、嘘でしょ……私の、最大魔法が、負けた……――? は、はは、あははははは(*´▽`*) これはすごい事だわ!」
ミアは何故か、魔法の打ち合いで負けたにも関わらず、とても喜んでいた。
打ち破ってくれたことがよほど嬉しかったのか、目には涙が浮かんでいる。
それはともかく喜んでいるのも束の間、そうも言ってられない。
魔力が枯渇寸前だったミアは、魔法を放った後にすぐに意識を失って倒れたミリィを治癒しなくてはならなかった。
そして、その後に再び周囲に結界魔法を張った。
帰り道――
ミリィはまだ意識を取り戻してはいない。
――が、生きている。
ミアは彼女(ミリィ)を背中に背負って、家に運ぶ事にした。
ミア
「まったく、すごい娘だよ、あんたは……まさか、私の魔法を打ち砕くなんて、今でも信じられないわ。それに――」
ミアは、ミリィの異質な魔力を放った姿を思い出す。
ミア
「……ミリィ、あなた……もしかして、人間じゃ、ないのかもしれないのね――あの、魔力は、精霊族特有の……――」
ミアは昔、冒険者だった頃に一度だけ精霊族に出会った事がある。
その時の異質な魔力と似ていたのだ。
ミア
(もしかして、この子の正体は……――)
そして、考え事をしていると家に到着した。
彼女を部屋のベッドに寝かせようと、寝室へと向かうミア。
寝かせる前に、生活魔法で衣服や身体を綺麗にしてあげた。
この時、ミアも一緒のベッドで寝ようと、自身にも生活魔法をかける。
そして、二人は、仲良く眠る事になった……――
次の日――
先に起きたミリィは、何故ベッドで寝てたんだろうと不思議に思いながらも、隣に抱きかかえられていたミアの姿を見て安心し、日課の朝食を作る事にした。
この時、ミリィは気付くべきだったのかもしれない。
もう既に……ミアは……――
還らぬ人と、なっていたのだから……
ミリィ
「し、師匠……――グスッ…ひっく……ひっく、うぇぇえーーーん!!」
続く。
*****
【作者コメント】
・皆様、お疲れ様でございます<(_ _)> リアラです☆彡
さてさて、今回はミアが生きていた時のお話です。
師匠としての最期を、生きた証として自身の最大魔法を授けようと全ての力を振り絞って放つミア。
でも、既に覚醒しつつあったミリィの力に、気付けなかった事で敗北……
いや、結果的に良かったのかもしれない。だって、死に際でも微笑んでいたのだから……
・魔法エフェクトは、毎度お馴染み「sai」にて追加しております(*´▽`*)ぬふぅ☆彡
・イラストの文字入れは「Power Point」で作りました。
・今回のお話の動画を、短編ですが作りましたので、Xにて公開中です!
是非見て頂けたら、スッゴク嬉しいです( ^^) _旦~~
⇒
https://x.com/MiliyAtowanetto 最後まで見て頂き、ありがとうございました!
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