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【マタタビ】26.星の樹

使用したAI その他
(前の話)
【マタタビ】25.助っ人
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 その声に反応するかのように、神の繭から伸びた触手は、大蛇へと伸びその姿を覆い隠していった。大蛇は触手に絡めとられ、次第にその姿が見えなくなっていく。そして、大蛇からエネルギーを吸収した神の繭は、今にも破裂しそうなほど、大きく膨れ上がっていった。

「さぁ、予言の時は来たれり!」

 フィズィが宣言すると、破裂寸前だった繭に亀裂が入り、外殻が弾けた。

「おお! 神よ! 我らに真の夜明けを……」

 フィズィは、歓喜の声を上げ、両手を広げ、神を仰いだ。しかし、彼女の願いも虚しく、繭から飛び出した触手はフィズィの体を貫き、引きちぎり、揉みくちゃにした。そして、繭から飛び出した触手は、繭の周りで儀式を行っていた仮面の修道女たちも取り込み、更なるエネルギーを求めて、宇宙ステーションの天井を突き破って外に伸びていく。触手は、俺とシロの方にも伸びてきたが、シルエラが鉄球で壁を作り、何とか凌いだ。

「急いで外に逃げましょう!」

 シルエラは、シロを背中に担いで走り出す。俺は、グリレのタクトを咥え、シルエラの横を走る。そして、次々と伸びてくる触手をタクトで逸らし、外へと向かった。

 宇宙ステーションから外に出た俺たちは、目の前に広がる光景に驚愕した。ニューナゴヤの夜空全体に広がっていたその光景はまるで——。

「……“星の樹”だ」

 シロが、シルエラに背負われたまま夜空を見上げて呟く。シロの言うとおり、そこには、まさに予言どおりの光景が広がっていた。

『2110-07-29、ニューナゴヤにて、地の底から星の樹が育ち、宇宙に還るだろう』

 予言の言葉が、頭をよぎる。神の繭から飛び出した触手は、落着点から上空に向かって伸び、太く絡み合い大樹のようにそびえ立っていた。そして、触手の先は、さらなるエネルギーを求めて枝葉のように夜空全体に広がっていた。

「……ついに、この時が来ましたね」

 シルエラは、夜空を見上げながら呟く。

 星の樹から伸びた触手は、ニューナゴヤの街に這入りこみ、無差別に人々を吸収していった。建物は一つまた一つと崩れ落ち、ネオンの光は消え、代わりに人々のエネルギーを吸収した星の樹が不気味に輝き出す。その光はまるで、星を実らせているようだった。

「シルエラ! このままだとどうなる?」

 俺は、シルエラに問いただす。

「このまま星の樹が育つと、封印されていた神格が復活します。そして、誰かが止めなければ、世界は再び滅び、宇宙の塵に還るでしょう」

 宇宙に還るのは、“星の樹”ではなく、この地球そのものか。もはや、地球上に安全な場所などないのかもしれない。だが、少しでも生存確率を上げるために、シロを連れてニューナゴヤから離れた場所に避難しよう。そう考えていると、シルエラに背負われていたシロは、シルエラの背中から降り、自分の足で地面に立って言った。

「私たちで止めよう」
「無茶を言うな!」

 俺は、思わず叫んだ。

「相手は、世界を滅ぼした元凶の一つだぞ!」
「だからだよ。私、この世界を滅ぼされたくない」
シロは、静かに言った。
「私、もっとこの世界を旅したい。色んな景色を見て、色んな人と出会いたい。世界が滅ぼされたら、全部なくなっちゃう」

 シロの瞳は、決意に満ちていた。

「私、この世界が好きだから、守りたい!」
 俺は、何かを言い返そうとしたが、シロの表情を見て、何も言えなかった。
「……分かった。ただし、一つだけ命令だ」
「何?」
「死ぬなよ」
「うん」

 シロは、頷き、両腕のガントレットを巨大化させた。

「シルエラ、シロを頼む!」

 何も力になれない自分が悔しいが、猫型ロボットである俺には、神格と戦うほどの戦闘能力はない。俺は、シルエラにシロを託した。

「お任せください、ご主人様。お嬢様は、私が命に代えても守ります」

 シルエラは、笑顔で巨大なモーニングスターを構えた。

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(次の話)
【マタタビ】27.アノマリィ襲来
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