影の舞踏 - シンカロン・イヴの潜入任務(5・終)
熱狂的な祈りが終わり、幻視が解け、現実世界に帰還する。
* * * *
やがて、イヴの動きが緩やかになる。彼女はゆっくりと立ち上がり、深く息を吐く。その瞳には依然として狂信的な光が宿っているが、表情には冷徹な決意も浮かんでいる。
イヴは静かにクローゼットに向かい、そこから一枚の、濃紺の修道衣を取り出す。その動作には、まるで聖なる儀式を執り行うかのような厳粛さがある。
彼女は丁寧に日中の制服を脱ぎ、身に着けていた装身具を一つずつ外していく。そして、黒い修道衣をゆっくりと身にまとう。胸元のロザリオが、紺の布地の上で一層輝きを増したように見える。
身支度を整えたイヴは、机に向かう。引き出しから特殊な紙と筆記具を取り出し、丁寧に報告書を書き始めた。
「親愛なる同志 ハイシスター様へ
本日、任務遂行にあたり極めて重要な情報を入手いたしましたので、謹んでご報告申し上げます。
黄昏梟が調査を進める『落着点』に関する進捗状況が判明いたしました。
現状、彼らは予備調査すら完了できておらず、本格的な調査着手には至っておりません。
その主な理由は以下の通りです:
1. 調査地点が拠点から遠距離にあること
2. 他勢力、特に旅人たちによる無意識的な妨害
3. 我が越夜隊の夜間活動による調査の中断
さらに重要な情報として、『落着点』には彼らが『危険なもの』と呼ぶ対象物が存在することが判明いたしました。これが我々の目標である『神の繭』であることは確実です。
黄昏梟は、この『危険なもの』の完全な封印を急いでおりますが、上記の理由により作業が難航しております。
現時点で、黄昏梟は『神の繭』の封印に本格的には着手できておりません。私見ではございますが、我々が『神の繭』を手中に収めるには、今がまたとない好機であると考えます。
今後も引き続き、『落着点』の正確な位置情報および黄昏梟の調査進捗に関する詳細な情報収集に努めてまいります。
私は、支配者様の御意志に従い、『神の繭』を誰よりも早く我々の手で目覚めさせるため、使命に全力を尽くす所存です。
いかなる困難があろうとも、必ずや使命を全うしてみせます。
敬具
イヴ」
書き終えると、イヴは慎重に紙を折り、封筒に入れる。そして、特殊な方法で封をし、決められた場所に隠した。
これが日中、彼女の留守中に越夜隊連絡員の手により回収され、やがて本部へ届く手はずになっていた。
「明日も…支配者様のために…」
囁くような言葉と共に、イヴは眠りに落ちていく。彼女の夢の中では、荒廃したノーマンズランドに佇む謎めいた遺構が浮かび上がり、その中心で蠢く神秘的な繭が微かに脈動していた。そして、その彼方には、支配者様の姿が微かに浮かび上がっているようだった。
イヴの唇が、無意識のうちに微かに動く。
「必ず…支配者様の元へ…神の繭を…」
ニューナゴヤ・シェルターの静寂の中、イヴの密かな誓いだけが、闇に溶けていくのだった。
夜明け前、イヴは目を覚ました。彼女の中で、昨夜の熱狂は冷え、再び冷徹な決意へと変わっていた。鏡に映る自分の姿を確認する。完璧な笑顔、整えられた制服。そして、胸元で静かに輝くロザリオ。
イヴは深呼吸をし、部屋を出る。今日も、彼女の静かな戦いは続く。黄昏梟のコミュニティの中で、落着点の正確な座標を探り、神の繭を目覚めさせるための情報を集めるために。
廊下を歩きながら、イヴの心の中で誓いの言葉が響く。
「私は影。私は道具。そして、私は支配者様の意志そのもの」
新たな一日が始まる。イヴの舞踏は、まだ幕を開けたばかりだった。
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ということでここまでです!
こういうの時間ずらしたほうがいいのかどうなのかわからんかったので一気に上げました。
前の話はこっち!
影の舞踏 - シンカロン・イヴの潜入任務(4)
https://www.chichi-pui.com/posts/6cb70723-2bb4-4cd8-b515-eb90047ce7ae/
メイキング!
https://x.com/SaliaYuhna/status/1819752167638815059
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