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『あの姉 2018春』(再掲含)

使用したAI Dalle
つまりはこういうことだった。
あの姉が中学卒業の寸前に造ったロボは総重量が60kg近くにもなる鉄製で、着れる構造にもなっておらず、そんなものを造られた家族も処分に困ってガレージの片隅に5年近く放置していた。
一方、真希ちゃんが高1の夏にキャラショーに出たのは、ずいぶん年の離れた従兄が率いるチームに入れられたからだった。既にチームは解散したが、事あるごとに謎の敵キャラとして使い回された従兄手作りのロボが、こちらもずっと真希ちゃんの実家に放置されていた。
成人式の前々日に振袖に合わせる帯留めを漁っていた真希ちゃんは、クローゼットの奥で久しぶりに懐かしのロボと対面し、かつてはショーで幾度となくこいつにやられたことを思い出した。
その上あの姉を"さわやか"に誘った春休みのあの日、よりによってあの姉の家のガレージにロボがいたものだから、真希ちゃんは何かを直感してあの姉にロボを着せてみたくなったのだ。
真希ちゃんの実家であの姉は、平然とした態度を装っているつもりだったが、"さわやか"の予約をすっぽかしてしまうほどの謎の興奮に包まれたままロボを装い、ロボに包まれたあの姉はもはや全然平然を装えてはいなかった。
真希ちゃんは真希ちゃんでそんなあの姉にピンチに付け込んで、こちらは平然とマーキングをやってのけるのだった。


4月に入ってなお真希ちゃんの残り香に酔わされていたあの姉。
入学式の晩に、父と母と行った津市内のサガミで天つゆを白いシャツにぶちまけるあの姉らしい粗相をして、娘のその乳の無さに父萎えるも、尽きない夢想の中味をつゆも知らない両親を前にしてあの姉は、早々に新天地での新しいロボ造りを粗削りに計画してバンバン構想を進めて行った。
下宿から歩いて行けないこともない距離にビバホームという大きなホームセンターらしきの看板が見えた。あそこならジャンボエンチョーよりかは品揃えも良さそうだ。
高専時代、食費を惜しんで密かに造り続けたロボは、寸法を盛大にミスった上に完成直前で強風に飛ばされて日の目を見なかった。
今度こそ完成させてやる。真希ちゃんみたいになる。


夢想の中でまで韻を踏んでしまうほどに重症化しているあの姉は、真希ちゃんみたいに格好良く、そして真希ちゃんみたいに踏まれたいと願うのだった。


(つづく)

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