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盆休みで帰省中、久々に「おさきさん」を見かけた。相変わらず青白い顔にボロボロの服でぎこちなく歩いていた。
 この街で生まれ育った人間なら、「おさきさん」を知らないやつなどいない。いわゆる歩く屍、ゾンビだ。何十年も前に死んでるが、土葬されてすぐに「土の加減で」墓から出てきたらしい。ここいらじゃそういうことがたまにあったもんさ、と爺ちゃんが言ってたのを思い出す。
 映画のゾンビと違って人を噛んで仲間を増やしたりするような悪さはしない。ただ街中をうろつくだけの無害な存在だ。
 噂では、おさきさんは戦争中に空襲で家族を失ったのだという。街中をさまよっているのは、家族を探しているからなんだそうだ。
 本当のところはわからないが、そういうことがあっても別に不思議ではないと思うし、今もおさきさんがこの街をぎこちなくうろついてるのだけは確かである。

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