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アキラの追憶・3

使用したAI その他
時折、この部屋に施設の大人たちが来てはひとり選ばれ何処かへと連れ去られてられて行く。
何処へなのかは分からないが、子供たちの間では『外の世界』へ行けるのではと噂されていた。

その証拠として、定期的に行なわれる『テスト』で優秀な成績を収めた者が選ばれること。
ここから出た子供は誰一人帰ってきたコトがないこと。
また閉鎖的な空間で隔離されているとはいえ、ある程度は自由に過ごせるし、大人たちから特に指示や命令なんて一切ないこと。
ただそれだけの理由。
子供ながらの甘ったれた思考。

皆がそんな希望を胸に自分が選ばれる日を待ち望んでいるのを私は部屋の隅で冷ややかに見つめていた。

『早く選ばれてここからいなくなって!』

私は、そう願うばかりだった。
そうすれば『敵』が一人減るから。
少しだけ、少しだけ痛い思いしなくてすむから。

この時の私は文字の読み書きすらできなくて。
『テスト』の意味すら知らなくて。
そんな私が選ばれることなんてないコトを幼心でも何となく察していて。
だからいつも誰かがいなくなるコトを願っていた。


ひとり、またひとりと、部屋から抜けていく。
そして今日もひとり、選ばれていった。

部屋の中には私を含めてあと4人。

『早く、早く、早く、早く…!』
『みんないなくなれ!』

そう、強く願った時。
あの嫌な音が聴こえ始めた。

どくんどくんどくんどくんどくんどくん。

「ひぃっ…!」
身体の中から聴こえる音。
私だけにしか聴こえない音。
小さい悲鳴と共に慌てて両耳を塞ぐ。

どくんどくんどくんどくんどくんどくん。
同時にまだ治りきってない傷が痛み始める。
ずきんずきんずきんずきんずきんずきん。
どくんどくんどくんどくんどくんどくん。


身体の中の脈動と痛み。
それがとてもとても気持ち悪くて。

私は手足にきつく巻かれた包帯を無我夢中で剥ぎ取ると、爪を立てて一気に掻きむしった。

治りきってない傷口から血が吹き出していく。
それに構わずに一心不乱に掻きむしる。

ぞりぞりぞりぞりと、自らの血肉を削いでいく。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
痛みで気持ち悪さを強引に上書きしていく狂気。

けれど。
こうすることであの気持ち悪さが消えていって。
救われた気がしたんだ。

全身を赤く染めながら私は笑っていた。

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