隠れ里(中)
中から若い女の声がした。
扉が開く。着物を着た少女が姿を現した。
「この雨では凍えてしまいますし、どうぞ泊っていってください。」
心配そうに私に声をかける。
私は彼女の気遣いにありがたく思いながらも、
彼女に関わってはいけないような感覚にも陥っていた。
まだ高校生くらいの容姿だ。夜遅くに見ず知らずの男が家に来たのに、
少女に応対させるなんて親は何をしているのか。
一人暮らし?こんな獣道しかない山奥に、こんな少女が住んでいるものだろうか?
それに、少女の背中には、作り物とは思えない、
パタパタと動く羽が生えている。
仮に作り物だったらすごい才能だ。いや作り物のはずがない。
そもそもこの家にはおかしい点がある。
外は暗く雨が降っているのに、家の窓には雲一つない日本晴れの景色が広がっている。
その上先ほどまで漂っていた夕餉の匂いは一切せず、少女特有の甘い匂いが漂っている。
やはり関わってはいけない。私は少女の目を見ないように努め、
「お気遣いありがとうございます。でもやっぱり大丈夫そうです。」
とだけ言って踵を返した。
つづく
PixAIにて作成
model: CetFusion 1.0
呪文
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