抗金英雄岳家軍勇将楊再興
使用したAI
Dalle
昔日に張飛有り
今世に楊再興有り
丈蛇矛の使い手として千古に英名を伝う
戦禍の中に子を救い
烽火より母を守る
かつて仇であり、また我が恩を返す存在
十年を忠臣として、日夜乱世に立ち向かう
今生恥じることなくも、小将軍には面目が立たず
(精忠岳飛第五十九回"少商河")
...岳鵬挙(岳飛)、韓良臣(韓世忠)、梁紅玉(良臣夫人。妓女出身と伝わる)...辺りまでは、中国史を学ぶ人ならば知っている名前でしょうが
楊再興まで知っている人は、相当の「通」でしょう。
日本ではほぼ知られていないながら、所謂「抗金名将」の中では前述の超大物三人に次ぐ位、中国では大変人気のある武将です。岳家軍の中では、岳雲、牛皐を凌ぐ人気者かもしれません。
その壮絶な最期は、宋史にも記載があります。
曰
「飛敗金人於郾城，兀朮怒，合龍虎大王、蓋天大王及韓常兵逼之。飛遣子雲當敵，鏖戰數十合，敵不支。再興以單騎入其軍，擒兀朮不獲，手殺數百人而還。兀朮憤甚，併力復來，頓兵十二萬於臨潁。再興以三百騎遇敵於小商橋，驟與之戰，殺二千餘人，及萬戶撒八孛堇、千戶百人。再興戰死，後獲其屍，焚之，得箭鏃二升」
狭隘な地形を利用したと思われますが、再興は何と寡兵三百を以て十二万の金軍に相対したと言われています。
しかし如何せん衆寡敵せず、死兵と化していたであろう宋軍三百は奮戦の末に自軍の兵数倍に相当する金軍二千を殺しながらも壮絶な玉砕を遂げました。
後に回収された再興の遺体からは大量の鏃が摘出され、文字通り針鼠の如く射殺されたことが判明しています。金軍は彼の勇猛を恐れ、最後は遠距離からの射殺に徹したものと推測されます。
岳家軍総帥岳鵬挙は、再興の遺体に取りすがって号泣したと伝わっています。
...
概ね史実に沿っている「精忠岳飛」ですが、所々脚本家の感情が只漏れして史実が書き換えられており、その点は視聴する側は要注意...というか、「史実はきちんと知った上で見る」姿勢が要求されます。
中華時代劇全般言えることですが、「史実は知ってて当たり前」というのは大前提です。
この第五十九回では杜充が宇文虚中に殺害されます...が、史実は知っている人が知っている通りです。彼は金の高官として天寿を全うしています。そもそも宇文虚中の死は杜充とは完全に無関係です。
脚本家としては、漢民族の裏切り者である杜充が、何の報いも受けることなく地位と財産を保ったまま安らかに死んだことが許せなかったのでしょう...せめてドラマの中では、民族の裏切り者に天誅を加えたかったものと思われます。
ドラマと言っても、さすがに岳鵬挙の悲劇的最後は書き換えようがなく、ただでさえ中国人としては感情の処理に困るストーリーなだけに(靖康の変と二帝北行、更には宋の女性皇族達が受けた集団性奴隷化は今なお中国史における最大の国辱の一つとされる)、せめて杜充だけにはドラマの中だけでも報いをくれてやりたかった脚本家の感情が見えます。
...しかし、そういう史実の概要は中国人は知っていても日本人は大概知らない訳で、史実における杜充や宇文虚中という人間の生涯を知らないで見ていると、脚本家に騙されて、虚構の作り話を歴史と思い込む過ちを犯すことになります。
日本史でも同じですがね...その辺は。
時代劇を見る時も、「史実(それもなるべく最新の研究に基づき)は知ってて当たり前」でなくてはなりません。最初は知らなくても後から学べばいいのです。私も日々、新しい研究、学説を学ぶことは怠っていません。歴史学とは、学びに終わりがないものです。毎日、己が未だ知らぬことを新たに知る...そんな繰り返しです。
更に言えば、宇文虚中という人物の名前ですぐピンとくる人は来るでしょうが、宇文という姓は元々漢族の姓ではありません。
宇文という姓は南北朝期になって中国史に登場しますが、元々は鮮卑族の家系であり、匈奴の流れをくむとも言われています。
いずれにせよ、北アジアの騎馬民族の家系であり、元々は漢族ではありません。
しかし、この宋の時代においては完全に漢化しており、宇文虚中という人物は完全に「漢人」として存在しています。中世中国においては民族という概念はありましたが、人種はそれほど問われませんでした。元々大陸国家ですから、人種的には混血が進み坩堝化していたからです。その点は古代ローマ帝国とも似ています。
つまり、南北朝期の宇文氏は主に「鮮卑族」として存在していましたが、隋唐期を経て宋代に至った時には完全に漢化していたということになります。
今世に楊再興有り
丈蛇矛の使い手として千古に英名を伝う
戦禍の中に子を救い
烽火より母を守る
かつて仇であり、また我が恩を返す存在
十年を忠臣として、日夜乱世に立ち向かう
今生恥じることなくも、小将軍には面目が立たず
(精忠岳飛第五十九回"少商河")
...岳鵬挙(岳飛)、韓良臣(韓世忠)、梁紅玉(良臣夫人。妓女出身と伝わる)...辺りまでは、中国史を学ぶ人ならば知っている名前でしょうが
楊再興まで知っている人は、相当の「通」でしょう。
日本ではほぼ知られていないながら、所謂「抗金名将」の中では前述の超大物三人に次ぐ位、中国では大変人気のある武将です。岳家軍の中では、岳雲、牛皐を凌ぐ人気者かもしれません。
その壮絶な最期は、宋史にも記載があります。
曰
「飛敗金人於郾城，兀朮怒，合龍虎大王、蓋天大王及韓常兵逼之。飛遣子雲當敵，鏖戰數十合，敵不支。再興以單騎入其軍，擒兀朮不獲，手殺數百人而還。兀朮憤甚，併力復來，頓兵十二萬於臨潁。再興以三百騎遇敵於小商橋，驟與之戰，殺二千餘人，及萬戶撒八孛堇、千戶百人。再興戰死，後獲其屍，焚之，得箭鏃二升」
狭隘な地形を利用したと思われますが、再興は何と寡兵三百を以て十二万の金軍に相対したと言われています。
しかし如何せん衆寡敵せず、死兵と化していたであろう宋軍三百は奮戦の末に自軍の兵数倍に相当する金軍二千を殺しながらも壮絶な玉砕を遂げました。
後に回収された再興の遺体からは大量の鏃が摘出され、文字通り針鼠の如く射殺されたことが判明しています。金軍は彼の勇猛を恐れ、最後は遠距離からの射殺に徹したものと推測されます。
岳家軍総帥岳鵬挙は、再興の遺体に取りすがって号泣したと伝わっています。
...
概ね史実に沿っている「精忠岳飛」ですが、所々脚本家の感情が只漏れして史実が書き換えられており、その点は視聴する側は要注意...というか、「史実はきちんと知った上で見る」姿勢が要求されます。
中華時代劇全般言えることですが、「史実は知ってて当たり前」というのは大前提です。
この第五十九回では杜充が宇文虚中に殺害されます...が、史実は知っている人が知っている通りです。彼は金の高官として天寿を全うしています。そもそも宇文虚中の死は杜充とは完全に無関係です。
脚本家としては、漢民族の裏切り者である杜充が、何の報いも受けることなく地位と財産を保ったまま安らかに死んだことが許せなかったのでしょう...せめてドラマの中では、民族の裏切り者に天誅を加えたかったものと思われます。
ドラマと言っても、さすがに岳鵬挙の悲劇的最後は書き換えようがなく、ただでさえ中国人としては感情の処理に困るストーリーなだけに(靖康の変と二帝北行、更には宋の女性皇族達が受けた集団性奴隷化は今なお中国史における最大の国辱の一つとされる)、せめて杜充だけにはドラマの中だけでも報いをくれてやりたかった脚本家の感情が見えます。
...しかし、そういう史実の概要は中国人は知っていても日本人は大概知らない訳で、史実における杜充や宇文虚中という人間の生涯を知らないで見ていると、脚本家に騙されて、虚構の作り話を歴史と思い込む過ちを犯すことになります。
日本史でも同じですがね...その辺は。
時代劇を見る時も、「史実(それもなるべく最新の研究に基づき)は知ってて当たり前」でなくてはなりません。最初は知らなくても後から学べばいいのです。私も日々、新しい研究、学説を学ぶことは怠っていません。歴史学とは、学びに終わりがないものです。毎日、己が未だ知らぬことを新たに知る...そんな繰り返しです。
更に言えば、宇文虚中という人物の名前ですぐピンとくる人は来るでしょうが、宇文という姓は元々漢族の姓ではありません。
宇文という姓は南北朝期になって中国史に登場しますが、元々は鮮卑族の家系であり、匈奴の流れをくむとも言われています。
いずれにせよ、北アジアの騎馬民族の家系であり、元々は漢族ではありません。
しかし、この宋の時代においては完全に漢化しており、宇文虚中という人物は完全に「漢人」として存在しています。中世中国においては民族という概念はありましたが、人種はそれほど問われませんでした。元々大陸国家ですから、人種的には混血が進み坩堝化していたからです。その点は古代ローマ帝国とも似ています。
つまり、南北朝期の宇文氏は主に「鮮卑族」として存在していましたが、隋唐期を経て宋代に至った時には完全に漢化していたということになります。
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