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敵に水を送る

使用したAI NovelAI
サラトバにおける戦争も厭戦気分が漂う時期、その作戦は行われた。

ウェスティリア軍が工兵部隊を動員し河川の流路を一時的にグランゼン側に移し替えた。
当時、その地には工房都市があり、火山の火口から発せられる熱を直接動力とする工業力がグランゼン軍の絡繰兵器を支えていた。
そこに突如として濁流が押し寄せた。
百年以上も洪水を経験したことの対グランゼン様式の建築物はあっという間に流され、水は火口に迫った。

火口に水が到達すると油でも流し込んだかのように爆発が起こり、それが火山の圧を解放した。
こうして、最初の濁流を生き延びた軍人と市民を衝撃波が襲い、そして水底に叩き落した。
一連の災厄が収まり組織的な救助活動が始まったとき、既に5日が過ぎていた。
そこにはかつての工房都市は跡形もなく、かつての火口と谷をうずめる水のみが出迎えたという。

この作戦の意図はいろいろ言われてきた。
曰く、敵策源地を水没させるのがねらいであった
曰く、ウェスティリア陸軍でこの地を占領し、維持するのに限界があったから
曰く、世界的に講和の機運が高まっており、グランゼンに復讐を誓う将軍があせっていたから
と。

いずれも憶測の域を出ない。
作戦を行ったウェスティリア軍も遭難してしまい、誰も証言してくれなかったからだ。

今はただ、沈黙を守る湖のみがそこにある。

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