玉響チトセの戦場俯瞰
玉響チトセが独り言ちた。セントレイク視察の最中、悪の神が活動を開始した。
町中に突如現れた黒い異形、悪神の眷属をセントレイクの冒険者たちが討伐している。
ヒノイにも同様の存在が現れたと連絡が入る。
島国かつ空港整備が成されていないセントレイクからの出入りは船が通常、しかしその海域はまさに悪神の眷属が生まれては押し寄せてくる大元だった。
もとより退路などは無く、母国に戻るには切り拓くしかないのである。
視察団は「敵を前にしてヒノイに臆する者無し」と緊急事態のためセントレイクの陣営への助力を決めた。
「緊急事態ですもの、使えるものは使うに決まってますわ」
チトセはそう言うと執事に荷物を開けさせる。
[[翔び、見切り、伝えよ。日ノ本に根差す相異なる同胞へ]]
詠唱認証を終えると、起動するは空を疾走する甲虫の兵器。
フェンテスの蜻蛉型諜報兵器からリバース・エンジニアリングで製作した異能機能追加型偵察機、『秋茜』だ。
『ちょっとチトセちゃん!? それは今使用しない予定だったでしょ!?』
視察に先立ち強引に借りたのですぐさま親戚から非難の連絡が入る。防衛省と異能省の共同開発の試作品を、長距離通信のテストという名目で無理やり借りたのだ。セントレイクはヒノイから最も遠い地であったが、視察団の荷物に忍ばせるには相当無理をしたはずである。
しかしチトセはそっけない。
「こうしないと視察団に被害が出ますわ。緊急避難ですわね」
『僕が一番怒られるんだよ~!』
「こんな状況で怒られるで済むなら上等と思いなさいな」
すげなく返すとチトセはタブレットで操縦しながら秋茜を戦場の空へ飛ばす。初フライトを慣れた手つきで操縦する時点で、何度か時間遡行した証だ。
元はフェンテスの超技術で作られた諜報兵器。撮影、記録、送信の高機能部分はそのままにしてあり、戦場の様子がよく撮れる。
さらにいらない機能はごっそり抜き、代わりに通信系の異能者が使用するチャンネルへの情報共有機能を新たに追加したのだ。これを使わない手はない。
「さあ、攻略動画配信開始ですわ」
チトセは悪神の眷属達に対する、セントレイクの戦士の多種多様な戦法を撮影、有効手段の解析材料として秋茜からリアルタイムでヒノイに共有を開始した。
『チトセちゃん!この長距離で秘匿回線が使えるのは大きいよ! 滅茶苦茶役に立ってるよ!』
この親戚、手のひら返しが早すぎる。
「ノリトキ、受信データを一部でいいからフェンテスにも送信しておきなさい」
『え? それはまた勝手にしちゃ怒られるやつだよ』
「毎度勝手な訳ないでしょう。貴方が上司に命じて特殊能力庁に内々に伝えておけばよしなに取り計らいますわ」
『上司に命じるなんて言葉もそうそう聞かないよ…』
「リターンはヒノイ規格での両国間軍事通信の実績ですわ。言わなくても思い至る方なのですからとっとと提案なさい」
連絡を切るとチトセは操縦しながら戦場に突入する準備を進める。
決断の時間が早まる分だけ被害は減る。今回フェンテスの被害が減れば悪神への対抗手段が増え、ヒノイの利に繋がる。
引いてはチトセにとって利になるという図式である。
「敵を前にしてヒノイに臆する者無し」
小さき令嬢だろうとそれは変わらない。
時間遡行しながら見出した、完全勝利のルート開拓を玉響チトセは邁進する。
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