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彼女はラビット王国の第3王女、
クレセリア・R(ロッド)・ローゼンハイム
ラビット王イグニス・ R・ローゼンハイム
の娘で、王位継承第三位であることから
家の責務を背負うことはなく、
自由気ままに暮らしていた。
今日も街へとお出かけにでる。

「姫様、仮にも王族なのですよ」

「いいじゃない、大事な仕事はお姉さまやお兄さまがやってるからね。私は自由に伸び伸びとしてる方が似合ってるから!」

今日もクレセリアは街をブラリとする。

「おっ!クレセリア姫、リンゴいるかい?」

「うん!」

クレセリア姫の元気溌剌とした姿は
民たちにとって、とても嬉しいものであった。

「美味しいねリンゴ!」

「ありがとうよ、作った爺さんたちに伝えたら、喜ぶだろうよ」

「このリンゴはスイーツに使うと良さそうね、メイ、このリンゴを王族御用達にしてらもらえないかしら」

「ですが、リンゴはもう…」

「あなたもかじったらわかるって!」

「で、では…」

彼女の齧ったものを食べる

「わっ、これは美味しいです!」

「でしょ!私の目に狂いはなし!」

とクレセリアは満面の笑みを浮かべる。

「「わぁ~」」

周囲の者たちは彼女のオーラに、尊さに
見とれる。
第3王女ではあるものの、国民たちに好かれていた。
庶民派の議員たちは彼女を推すことで、民たちの声が反映された政治の実現を考えていた。
対して、貴族派は民の権威が増せば、自分達の地位が危うくなるとして、彼女の存在は邪魔なものとなっていた。
中立派閥の王党派はなんとか、彼らが
戦争することのないように調整しようと模索する。
兎の国では、王位継承を巡って、
動乱が起きようとしていた。
庶民派は第3王女を…
貴族派は第1王女を…
王党派は第1王子を…

第2王女のマリー・R・ローゼンハイム
は隣国、猫国との友好関係のための結婚
つまり、政略結婚
で王位継承からは外れている。

第3王子のアイビス・R・ローゼンハイム
は庶民派の代表として

第2王子のマルチネス・R・ローゼンハイム
は貴族派の代表として

ラビット国は3つの勢力の、均衡の中で
不穏な空気が漂っていた。

されど、彼女は興味がなかった。
平穏に幸せに暮らせればいいと…
ならば、地位や権威は必要ないのだと。
だが、周りはそれを許さなかった。
彼女が城をでるのには、
閉塞した空気から逃れたいのもあった。
平和と愛と幸せを希求する姫、
空を眺める。

「ねぇ、メイ、どうして空は青いのに私たちの心は、赤いんだろう」

「哲学的なことをいいますね姫様…」

「なんだか、この国に悪いことが起きそうな予感がして…」

「おっちゃんは政治のことはわからんが、家族が無事に暮らせるなら、それ以外は望まないよ」

リンゴ売りのおじさんが話す
他の街のものたちも頷く。

「だからさ、もし、姫様に大切なものができたら、それを大事にしてほしいんだ」

「大切なもの…」

すると、そこに猫耳の軍人が現れる。

「おじさん、リンゴ1つくれないか」

「おぉ、見ない顔だね、どこからきたんだい?」

「猫国から」

クレセリアは彼を見つめる。
黒髪に猫耳、凛々しい顔つき、
片目には眼帯をしている。

「あの、ここにくるのは初めてですか?」

「まぁ、以前にも来たことはあるけど、方向音痴なものでアハハ…迷ちゃったんだよ」

「案内します!メイも行こう」

「はっはい!」

丸眼鏡をくいっとさせあせあせするメイ、
クレセリアのすべきこと、今は見えないけれども、目の前の困ってる人が手伝おうという気持ちになった。

「あのお嬢ちゃんが、女王になったらいいな」

「そうだねぇ、そしたら、生活も楽になるのかな」

街の人たちは彼女が女王になることにひそかな期待を寄せていた。

「ここはニンジン広場!いつも、音楽と歌にあふれる楽しい場所!」

「ブレイブ~歌いて~
救う~竜の苦しみ~寄り添う勇者~」

「私も好きな物語ですな」

眼帯の猫耳軍人は微笑む

「あの歌はブレイブ王国で歌ったら処刑されるらしいんですよ」

「そうなのですか…」

「えぇ、歴史とは真実を語るとは限りませんね、だからこそ、歌で伝えたいという者がいたのでしょう」

「軍人さんらしくないですねフフフ」

「私は本来、歴史学者になりたかったのです。まぁ色々あって軍人やってます」

「そうなのですね」

少女は微笑む、眼帯の猫も笑う。
この瞬間、彼女の心はポカポカしてきた。

(もっと、この猫耳さんと話したいな)

「あの、猫耳さん名前は」

「クラウス・ニャウ・シュタウフェンと言います」

「クラウスとお呼びしてもいいかしら」

「えぇ、皆からはクラウスと呼ばれてるので」

「お嬢様!」

「いいの…私は格式ばったのは苦手だから」

「では、あなたの名前を聞いてもよろしいですか」

「えぇ、わたしの名前はクレセリアですわ」

「クレセリア、となると貴方はこの国の第3王女ですか」

「はい!」

「まさか、こんなところにいるなんて思いもしませんでした」

クラウスは花を渡す

「あなたとの時間、有意義な時間を送ることができました。これは、ささやかな気持ちです」

花をもらうクレセリア

「まぁ、きれいなお花ですわね」

「えぇ、我が国で美しいとされている花です」

「もらってもよろしいので?」

「えぇ」

「嬉しいです…」

クレセリアの心はポカポカになった。

「大佐!探しましたよ!」

「では!これにて」

「クラウス!あの、また、会えますか?」

彼はしばし考え、そして、笑顔で

「また会えるのを楽しみにしています」

クレセリアに淡い風がふく

「ねぇ、メイ、私、恋しちゃったかもしれない」

「クレセリア様!身分が違いますよ」

「メイ、愛に壁なんてないのよ!そう、あの空のようになれたら、どんなに嬉しいことか」

クレセリアの窮屈な人生に
光がさした。

されど、彼女とは別に世の中は曇りに染まる。

権力闘争と国家間の政争…
彼女に平穏な日々が送れるのを願うばかりだ。

(猫メモ)
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