オリジナルノベルシリーズ 第1弾 Love In An Elevator 第1話 絶世の美女
俺は社長の付き添いとして有名高級ホテルで開催されたパーティー会場にいた。
仕事内容は接待と行き帰りの送迎、主にこの2つだ。
まあ俺にとっては半ばルーティンワークに近いもの。
いつものように控室でおにぎりを頬張りお茶を飲みながらパーティーの終わりを待っていた。
数時間後、パーティーが終わり社長の指示を伺おうと思いたった瞬間、俺のスマホが鳴った。
「私だ、今から2901号室へ来てくれ」
社長の命令伝達はいつも簡潔明瞭だ。
俺はエレベーターに乗り込み2901号室のある29階へ向かった。
2901号室のドアをノックすると俺が名乗る間もなくドアが開き、社長が現れた。
「〇〇、私はこれからN社との2次会に参加する。先方が用意した車で会場に行くので私のことは気にせずともよい。その代わり女性を1人自宅へ送り届けてくれ」
「送り届けた後は、お前はそのまま帰っていいぞ」
「了解しました」、とだけ俺は返答した。
社長は2901号室のルームキーを俺に預け、足早にエレベーターホールへ歩き出した。
とにかく行動が迅速な社長にはいつも振り回されてばかりの俺。
まあこれが俺の今の仕事なのだから仕方ない、それはさておき。
「肝心の女性って、どこにいるんだ?」
俺が部屋の中を覗き込むとそこには赤いロングドレスを身に纏った美女が立っていた。
体が硬直した、という表現は日常的に使われるものの、女性と対面しただけで体が硬直するなんてことは実際あまりないだろう。
だがあの時ばかりは違った。本当に体が硬直してしまったのだ。
まさに絶世の美女と呼ぶにふさわしい圧倒的なオーラを感じた瞬間だった。
「よろしくお願いします」
女性は申し訳なさそうな小さな声でそう答えた。
声で判断する限りではまだ世間ずれしていない若さが感じ取れる。
長身、巨乳、くびれたウェスト、長い脚、完璧といってもいいプロポーション。
そしてその若さと反比例する圧倒的な存在感。
俺は恐る恐る尋ねてみた。
「ひょってして芸能関係の方ですか?タレントさんとかの」
女性は手を振って否定した。
「違いますよぉ、ただの女子大生です。21なんだけど私って年齢より老けてますか?」
「いえ全然、老けてるだなんてとんでもない。お綺麗ですよ」
そう弁明するのがやっとだった。
雰囲気が普通の21歳女性に出せるような代物ではない、というのが本音なのだがそれはあえて言うまい。
ましてや社長にとっての客人だ、失言は許されない。
不要な失言で社長の逆鱗に触れて消えていった同僚をこれまで何人も見てきたし、同じ轍は踏むのは愚かなことだ。
「それでは行きましょうか」
俺は必死で営業モードに気持ちを切り替え女性とともにエレベーターホールへ歩を進めた。
エレベーターホールでエレベーターの到着を待つ。
到着を待っている間も言葉で表現しがたい緊張感が俺を支配する。
早くこのプレッシャーから解放されたいという気持ちが徐々に増してくる。
3分程経ったところでようやく29階へ到着、足早にエレベーターに乗り込んだ。
第2話へつづく
呪文
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