ゴブリンの生態
体長は成人男性の半分〜三分の二程度、緑色の皮膚に尖りのある耳、大きく裂けた口が特徴で、知能こそそれほど高くはないが、原始的な武器を使用することが可能な上にある程度の社会性を持っており、集団で行動するケースが多いことから侮ることのできない脅威であった。
家畜や田畑を荒らすなどの害を与えること多いが、中には行商人や村落を襲う場合もあった。また、ゴブリンは人類の女性をさらって繁殖の苗床にすることがあるため、女性には特に注意が必要とされていた。
特に統一暦1800年代における『冒険者時代』では、一般人のみならず女性冒険者の被害も多かったと言われている。
ゴブリンは非常に繁殖欲求が強く、昼夜を問わず何度も性交を行うとされている。これらの行為により、攫われた女性は心身ともに疲弊するとともに、妊娠・出産を幾度も強制させられた結果、そのほとんどが精神を崩壊させるという報告が残っている。
※補遺1
ゴブリンはその多くが三倍体の雄であり、通常の生物ならば繁殖不可能ではあるが、ゴブリンの精子は人類の卵子と結合する際に卵子の持つ遺伝子を一部破壊し、自らのクローンに極めて近い子孫を母胎に産ませることが可能であると判明した。
この性質から、ゴブリンは人間やエルフなどの他種族との交配が可能ではあるが、産まれてくる殆どが父親であるゴブリンと同一の遺伝子を持つこととなる。そのため、遺伝子多様性に乏しい生物学的な弱点が後年に発見された。
これにより、統一暦1900年代後半にはゴブリンにのみ効果を発揮する化学兵器が作成され、大規模なゴブリン駆除が各地で行われた。結果、統一暦2000年代初頭にはゴブリンはほぼ絶滅状態となり、今日においてはゴブリン被害は根絶されたとされている。
※補遺2
研究の結果、ゴブリンの遺伝子情報には何らかの人為的改変の痕跡が確認された。また、古文書等の記述内容を踏まえるとオリジナルのゴブリンは『民族浄化用の生物兵器』であった可能性が高いことが明らかとなった。
現時点においても作成が非常に困難な人造生命体を遥か昔に作成できた理由として、失伝した古代魔法の影響があったという仮説が立てられており、各界からの注目が寄せられている。
※補遺3
統一暦2000年代初頭アステリア連邦の国境近くにある街の片隅に、『ゴブリン鎮魂碑』が建てられてた。ここはゴブリンの自然環境下における最後の生息確認地であり、石碑には「我々人類社会を守るため大陸全土において人為的に絶滅に至らされたゴブリン達の魂、ここに眠る」と記されている。
マーク・エトルス著『ニドヴァル大陸における生物の盛衰』(統一暦2016年出版)
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