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水より濃く血より赤し (1)

使用したAI Stable Diffusion XL
小さな頃からの娘の口ぐせは、「大きくなったら、パパのお嫁さんになる!!」だった。

姫架(ひめか)は僕の自慢の娘だ。歳を重ねてからの子供は目に入れても痛くないというけれど、そのご多分に漏れることなく僕は姫架のことが可愛くて可愛くて仕方なかった。

婚活サイトで知り合った妻とやっとの思いで結婚してから一年。僕たち夫婦は姫架を授かった。
初めての子育ては苦労の連続で、僕はなるべく妻の助けになれるように寝る間も惜しんで協力した。その甲斐あってなのか、姫架は僕に昔からよく懐いてくれた。

美人な妻と可愛い娘に恵まれた幸せな絶頂期。……そんな日々が、いつまでも続くと思っていた。
異変が生じたのは、姫架が小学四年生になった春先のこと。妻が突如、妊娠三ヶ月であることを僕に打ち明けてきたのだ。

普通であれば喜ぶべきところなのだろう。それが本当に、僕の子供であれば……の話だけど。
僕たちは典型的なレスで、姫架ができてからは一度も夫婦の営みを行っていなかった。
そのことを問い詰めた途端、妻の美夜子はこれまで被り続けていた貞淑な仮面を脱ぎ捨て、本性を現した。

「誰があんたみたいな冴えない男と、好き好んで結婚なんてするもんですか。この際だから教えてあげるけど、姫架だってあなたと血なんて繋がってない。ようするにあんたは、これまで赤の他人の子をせっせと育ててたってわけ!」

托卵――元はカッコウなど一部の鳥類が、雛を他の鳥の巣に押しつけて育てさせる習性――転じて、不倫相手の子を我が子と偽って育てさせる行為。
そういう噂を耳にしたことはあったけど、自分の身に降りかかってくるなんて思ってもみなかった。

娘の姫架にも、僕の無能ぶりをたっぷり吹き込んだ後だと勝ち誇る美夜子。
絶望に打ちひしがれる僕の前に、よそ行きの服に身を包んだ姫架が現れる。

「ひ……姫架まで、僕を見捨てるつもりなのかい?」
「……もう、そんな顔しないで。わたしだけはちゃんと、パパの味方になってあげるんだから」
「ちょっと、何をしてるの姫架。もう家族ごっこは終わりなのよ?」
「そうだね、家族ごっこはもう終わり。もっとも、ここを出ていくのはあなたのほうだけどね……美夜子さん」

絶体絶命の窮地に立たされたと思われた僕に、手を差し伸べてくれたのは姫架だった。

「ふざけるのはやめなさい!! あなた、何を言っているのかわかってるの!?」
「ふざけているのはあなたのほうでしょ。口を開けば、いっつもパパの悪口と愚痴ばかり。ほんっと、よくもこうまで言えるものだと呆れるわ」
「じ、実の母親に向かって、何て口の利きかたをするの!!」
「やめてよ。あなたと血が繋がってるなんて、おぞましくて吐き気がする。わたしは昔っから、あなたのことが大嫌いだったわ」
「ひ、姫架。君は……」
「今まで黙っててごめんね、パパ。だけど、わたしがパパを守るためには、こうするしかなかったの」

姫架は美夜子が契約していた弁護士を逆に買収し、彼と共謀して美夜子とその浮気相手を追い詰める証拠集めを進めてくれていたのだ。
その後、寝返った弁護士の協力もあって、夫側が圧倒的不利に立たされるはずの離婚闘争は僕たちの勝利に終わる。

僕と姫架は住まいであるマンションを売却し、新たに郊外へ一軒家を借りることにした。造りは古いながらも、和洋折衷の様式を備えており、交通の便の悪さを除けば掘り出し物といえた。

「こんなに素敵なお家にパパと住めるなんて、なんだか夢みたい」
「ごめんな、姫架。こんな時期に転校なんてさせて」
「ううん、いいの。パパが一緒にいてくれるのなら、どこへ行ったって幸せ♥」

そう言ってはにかむ姫架を抱きしめながら、僕はここで娘との新たな人生をやり直す決意を固めるのだった。

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