深淵を覗きし時

2024/06/18

使用したAI Stable Diffusion XL

不可解、と言えばそれで片付く事件だった。カメラマンとモデルの失踪。ただし二人共プロとしての肩書ではなく、正業在りきでの、趣味としての肩書だった。モデル、の方は正業がフィットネスクラブのインストラクター、カメラマン、の方は正業が医療機器メーカーの営業マン。二人共正業による接点は無かったが、趣味の分野で繋がっていた。とはいえモデルの方は際どい、セクシービデオすれすれの配信動画でフェティッシュな衣装を発露する特殊な性癖を晒しており、半年前にアカウントを凍結されてしまったという。カメラマンの方も、週末には山深い奥地へと分け入っては廃坑だの隧道だの廃墟だのを撮影して回り、ＳＮＳ上でセルフレビューするという趣味嗜好を満喫していたが、これも半年ほど前に不法侵入で逮捕され、器物破損で罰金刑を食らっていた。その翌月に開催された大規模同人即売会に作品を頒布できず気を腐らせていた二人は遭遇し、意気投合して互いの趣味を融合させた写真集を次回の即売会で頒布した。するとこれが大当たり、廃墟や廃坑を背景にぴっちりとしたコスチューム姿でポーズを取る彼女の写真集は完売するに至る。味をしめた二人は毎週のようにスケジュールを合わせては地方へ出向き、薄暗く人気のない人工建造物にて撮影を行う。自分も拝読したが、退廃的な美、というものを感じたような気がした。そうやって先月までは活動していたことは確認できたが、それがぷっつりと止まってしまった。行為が行為だけに身内にも友人にも上司にも行き先を告げずに活動していたことが仇となり、失踪として明るみになった。モデルは配信動画のファンはそこそこ居ても交友が皆無、リアルの交友も乏しい有り様。カメラマンも廃墟撮影という同好の士がそれなりに居て、交流も少なからずあったが、人間の、それも美女を被写体に含めるようになって以降は妬み嫉みもあり、気がつけば二人でつるむようになっていた……らしいが、あれだけ肉感的に読者を挑発する写真を撮っていながら、二人の関係はあくまでも淡白だった。自宅のＰＣを調べてもメールのやり取りは事務的で、色気というものがまったくない。スマホ上の通信であればもう少し親密になっているのかもしれないが、遺留物、二人が身につけていた所有物は一切発見に至っていない。このままいけば捜査も縮小、事件性に乏しく有益な情報を待ち、迷宮入りになるだろう。そう高を括っていたところに、北関東の山奥でカメラマン所有のミニバンと、カメラが発見されたと連絡が入る。炭鉱跡地へ続く山道で車は乗り捨てられ、そこから更に奥まったところの隧道の途中に、地面に叩きつけられた状態でカメラは転がっていた。幸いにして中身のメモリーカードは生きており、失踪の手がかりを掴むためにも中身の確認を急いだ。画像データは百枚以上収められていたが、生き残っていたのは僅か４枚。エロスとフェティッシュが渾然一体となった艶めかしい被写体と、退廃的で無機質な背景。最後の写真を目にし、暴行恐喝詐欺殺人などあらゆる事件を経験したはずのベテラン刑事が、背筋を凍らせた。

これは、誰だ──？

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怪談ものには些か早いし、自分はこういう類が苦手のビビリなので意図して生成する気はなかった。でもAIにありがちな「奥まったところになんか人影を足す」のがあまりにもホラーチックだったので、実際にあった事件をモチーフにしてキャプションを編む。失踪事件や行方不明案件の醸し出す「どうして」という不可解さや理不尽性は、事件を知った者の脳裏になんとも言えぬ暗い神秘を感じずにはいられず、誰のせい、何のせい、という代物をついつい模索してしまう。遺留された失踪者の近影と事件のギャップが大きければ、それは尚更に大きくなる。真相を掴むとあっけない、小蛇の尻尾だったりするのだが、未解決となればそれは尻尾すら掴めぬ大蛇となり、追求する者を淡々と凝視しているのだ……などと中身の空っぽなルポルタージュ風に解説してみたり。

呪文

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イラストの呪文（プロンプト）

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