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https://www.chichi-pui.com/posts/10f8c28a-6b16-42d1-9d62-6a0c68a53cc1/ハルト「おはよう」
ダイチ「おう、おはよ。あの後どうなった?」
ハルト「なんもねえよ。すぐに寝ちまったから」
ダイチ「何だよつまんねえ。で、今ゾランちゃんは何してるんだ?」
ハルト「ゾラン『ちゃん』て、レナちゃんと混ざってるぞ。……ここにいるよ」
ホームルーム前の教室で、俺とダイチは前後の席で雑談をしている。
二度寝の結果いつも通り母親に叩き起こされることになったが、ノートに化けていたゾランには気付かれずここまで来ることができた。
そのノートは今、この鞄の中にある。
ダイチ「は? ただのノートじゃん」
ハルト「実は物にも変身できるんだよ」
ダイチ「マジか、スゲぇな。じゃあほかの物にも?」
ハルト「ああ。ゾラン、この筆箱に変身して?」
………。
ダイチ「変わらねえな」
ハルト「おかしいな、そんなはずは……。まさか!」
嫌な予感がして、一瞬にして血の気が引き、背筋が凍りついた。
一方その頃、ハルトの家。
ゾラン「行ってしまった」
私は擬態を解いた。
ずっと動かずにいるのはさすがに疲れる。ハルトが二度寝している間も一旦擬態を解き、この星のことを調査していた。
そして部屋の外から物音が聞こえたのを合図に元の姿に擬態したのだが……。
ハルト母「ハルト! いつまで寝てるの! 早く起きなさい! まったく。あら? こんな所にノート置きっぱなしにして」
そう言われた途端、私は持ち上げられて机の上に乗せられてしまった。
ハルト「………」
そして無言で鞄に入れられたのは、私ではなく本物の「ノート」の方だったのだ。
〈画像〉
ゾラン「もう少し調べてみるか」
辺りを見回す。
ハルトの部屋には様々な書物や電子機器がある。まずは書物の方に目をやった。
中でもひときわ目立つ、やたら分厚い書物を手に取る。
「国語辞典」と書かれたその書物を開くと、様々な単語とその意味らしき文が羅列されていた。
ゾラン「これがあればこの星の言葉が理解できそうだ」
私はその「辞典」を片っ端から端末でスキャンしまくり、端末内の語彙を充実させていった。例文もあるので使い方も問題無い。
ちなみにこの端末はメモリが私の脳内とリンクしており、スキャンしたものを瞬時に記憶として定着させることができる優れ物だ。
続いてカラフルな書物、もとい「本」を手に取る。
これは「マンガ」という物で、我が星・セレストラでも知られている。
どうやら辺境の星でこのような絵入りの書物を読む文化が広まっていると。
ゾラン「読める!読めるぞ!」
ただの模様にしか見えなかった文字が、すっと頭に入ってくる。
この星、いや、「日本」というこの「国」の現代文化が手に取るように解る。ページを繰る手が止まらない。
これは後に知ることになるのだが、このマンガが俗に言う「日常系」というジャンルであることも私には幸いした。
何冊か読み終えた後、私は電子機器、いわゆる「パソコン」を操作した。
このテの機械は説明書など読まずとも勘でできるようになっているものだ。
私はたやすくロックを解除し「インターネット」に接続すると、マンガの作中に登場した、辞典に載っていない単語や言い回しなどを検索した。
ゾラン「なるほど、この国には男言葉と女言葉というものがあるのか。実に興味深い」
こうして私はすっかり「インターネット」の世界にハマってしまったのだった。
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