猫は旅に出ることにした
猫は旅に出ることにした。薄汚れた街の雑踏を抜け、静かなところを求めて。
猫に名前はない。かつては飼われていた頃もあったかも知れないが、それは遠い彼方に霞んでいる。ただ一匹の猫として生きること。それだけが望みだった。
猫は歩き出した。空が白み始め、うっすらと光が差し始める中を。屋上からぬるぬるとパイプを伝い、非常階段を下って、ぴょんと地上に降り立つ。コンクリートの地面はまだまだ暗く冷たかったが、それを気にする猫ではなかった。
(2枚め)
街はまだ眠っている。表通りの店々はシャッターを下ろし、点在する街灯が細い光を落とす。朝が始まろうとしていた。猫はその前に発ってしまいたかった。人々の足、足、足が視界を遮るその前に。
人気のない通りを抜け、路地とも呼べない細道を歩き、繁華街を抜けて町外れへ。道が緩やかに上り始め、丘の斜面に沿って段々と建てられた住宅街へ入る。どこか見覚えがあるような気がする。でも構わなかった。朝日がゆっくりと満ちてきて、道の端に影を落とす。猫はその中へと身を滑らせながら、歩みを続けた。
(3枚め)
やがてたどり着いた高台の公園には、色鮮やかな花が咲き乱れていた。どこか甘い香りが猫のひげを揺らし、くんくんと鼻をうごめかす。ベンチの上にはカラスが止まっていた。ちょっと猫の方を見て、またひょいと首をめぐらせる。辺りはまだしんとしている。早朝のランニング走者がやってきて、カラスが慌てて飛んでいく。猫は水場でわずかに喉を潤すと、また歩き出した。視界の端には絶えず登ってきた街の姿がちらついていた。粘土細工のように積み上がった時そのものの姿が。
もうひとつの入り口から外に出て、まっすぐに続く坂道を降りていく。やがて線路が見え出してきた。駅があるのだ。そこの駅長は猫だった。今日も改札の前であくびをしながら、通っていく人たちを見つめている。猫は軽くあいさつをすると、自分もまたその中へ入っていった。人々が向かう街の中心地とは反対の方向へ。
(4枚め)
電車はがらがらに空いていた。入ってきた猫を見とがめる者もいない。朝まで仕事をしていたのか、横に長い座席に突っ伏すように寝ている人もいた。どこかでラジオが鳴っている。お目覚めの音楽と、ディスクジョッキーのさえずるような声。夜の名残を吹き飛ばすような明るさで、とうとうとまくし立てている。猫にそれを解する手立てはなかった。その必要もなかった。
誰もいない座席の上にひょいと飛び乗り、通り過ぎる景色を見つめる。何という速さなのだろう。猫は人よりずっと速く走ることができるけど、電車のようにはいかなかった。電車はその図体にふさわしくけたたましい音を立てて、蛇のような胴体を引っぱっていく。その確かな動きと、規則正しい機械音と、眠る人のいびきが一体となって、猫を次の場所へと運んでいった。
(5枚め)
終点の駅で降りたのは、眠っていた人と猫だけだった。もうすっかり夜は明けていた。車内のこもった空気から解き放たれ、心地のよい風の中を歩く。潮の匂いがする。それが猫の足を早めさせた。気づけば同じような猫の気配がそこここに感じられる。みんな考えることは同じなのだ。
陸地の尽きるところ。コンクリートの岸壁が日の熱を吸収して、程よく温まっている。早朝の漁から戻ってきた船が繋留され、どやどやと人が降りてくる。朝の市場は競りの真っ最中だった。大きな魚が次から次へと手渡され、さばかれて、人の中へと消えていく。そこから弾かれて、箱の隅に残った魚が、猫たちのごはんになるのだった。
Styles ['Fooocus V2', 'Fooocus Enhance', 'Fooocus Sharp', 'Fooocus Masterpiece', 'Fooocus Negative']
Base Model animagine-xl.safetensors
Refiner Model CounterfeitXL-V1.0.safetensors
Refiner Switch 0.5
Version v2.1.865
呪文
呪文を見るにはログイン・会員登録が必須です。
イラストの呪文(プロンプト)
イラストの呪文(ネガティブプロンプト)
- Steps
- Scale
- Seed 4638663208469922643
- Sampler
- Strength
- Noise
- Seed 4638663208469922643
コメント
コメントをするにはログインをする必要があります。