囚われの姫騎士
この私が憎いか?
何が伯爵家の一人娘にして騎士一番隊長だ!何が国の誉れだ!敵に敗れ囚われの身となりながら自害し果てず敵将に抱かれて生き永らえる貴様を称える者などおらぬわ!
だが喜べ。貴様を蔑み唾を吐く者はもうすぐ居なくなる。何故かだと?
貴様の国はもうすぐ滅亡するだろう。そうだ!貴様の祖先が滅ぼした我が王国のようにだ!
我が祖先は貴様の祖先と剣を交えそして敗れた。我が一族は領地の殆どを奪われ諸侯の地位に甘んじることとなった。
我等は二百年待ったのだ!ようやく貴様と貴様の主人に復讐する時が来たのだ!
すぐには殺さぬ。貴様はまず私がたっぷりと楽しませてもらう。そしてその後兵達の慰み物にしてからじっくりと嬲り殺しにしてやる。
貴様が女に生まれてくれて本当に嬉しいぞ!男では決して味わえぬ地獄の苦しみを味わわせてやれるのだからなあ!クックック…ハァーッハッハッハッハッハ!
・・・・・・
祖先から領地を奪った敵を滅ぼし王国を再建した英雄として伝えられる彼について、その人となりや行動について知ることの出来る一次資料は極めて少ない。ただわかっているのは勝利に際しかつての宿敵の子孫を戦場で討取らず生け捕りにした上で処刑していること、その宿敵の子孫というのが女騎士だったという説がある、ということだけである。
宿敵の子孫とされる人物についてもその存在は謎に包まれており、前述の通り名前も性別も定かではなく、現在ではその実在すら疑問視されている。かつての国境線近く、宿敵の一族とされる伯爵家の領地だったといわれる土地には隣国の『悪魔に魂を売った残酷な王』に敗れて無惨に殺された『伯爵家の美しき姫騎士』の物語が伝わるが、推定される成立年代と登場する人物名の類似からモデルに比定されているだけであり、宿敵の女騎士の実在を立証するには至っていない。
全ては歴史と呼ぶには余りに曖昧な伝説の霧の彼方である。
呪文
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