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「撮影終了です」

「ありがとうございます」

「で、ここから、あなたにはグラビアからヌードになってもらいます。拒否権はありません」

「えっ、ちょっと待って、」

目隠しを外されると裸になっていた

「陰毛がもっさりじゃないですか、よくはみ出さずにすみましたね」

「すっすみません」

「別に、陰毛がある方が興奮するって輩もいますからね」

カメラマンは冷静に彼女の裸をレンズにおさめる

「どうして、陰毛は残してたんですか」

「あの、昔、おばあちゃんが行っていたんです。陰毛は大切なお守りだったって。」

「へぇ、しかし、今の世相は西洋化の考えが浸透してますから、陰毛はむしろ、邪魔で不潔という考えが広まってますが」

「はい、だから、剃ろうとも考えました、けど、おばあちゃんの過去を知ると、なんだか、剃る気にはなれなくて」

「どんな過去があったのですか」

「はい、おばあちゃんにはおじいちゃんがいて、戦地に行く前に陰毛の入ったお守りを渡したんです。しかし、運命って残酷ですね。おじいちゃん、その戦いで死んじゃって…」

「じゃあ残す意味ないじゃないですか、剃った方がいいですよ。介護になるとその陰毛が邪魔になるって話を聞きますし…」

「あなたはどうなんですか?」

「僕はいいたくないです。素顔を人にさらけ出したくないから…」

「あなたは卑怯で臆病なんですね…」

「臆病だからこそ、カメラマンをやってるんです」

「…」

「…」

彼らは黙る、粛々と撮影が進む。

「あの、本当は陰毛が好きなんです…」

「…!?」

「だけど、好きっていうと拒絶されるのではないか、ひかれるのではないかって毎日びくびくしながら過ごす虫なんですよ」

「虫…ですか…カフカみたいですね」

女性は微笑んで有名な文学作家の名前を出す

「カフカ…あの変身ですか」

「はい、あなたの感じがまさにそれって思いましたよ」

「からかわれるのは心外だな」

「いえ、からかってはいません、尊敬してるんです、あなたのその仕事の一歩引いた視点で物事を見つめてるのが」

女性の瞳は先程までの無感情から
好意へと変わる。

「では、僕のお願い聞いてくれますか…」

「はい、いいですよ」

「骨になってもらえないでしょうか!」

「えっ?」

女性は驚きの表情をする

「この床に乗ると骨化が進むやつです」

「死ぬことはないんですよね」

「はい」

「なら、乗ります、私の全てを見てほしいです」

女性は骨化が進む床の上に立つ。

「なんともない、あっ!」

足、手足から筋繊維が見え、次第に骨へと変化していく。
お腹の方へと視線を変えると筋繊維から内臓がむき出しになっていく

「これがあなたの体の中身ですか」

「わっ私の心臓が動いてる」

心臓のドクンドクンと鼓動を打って
血液を巡る様は彼の胸にくるものがあった。
その様子を納めていく、一瞬も逃さず

「あっ、私の体ももうひょろひょろ…カタカタカタ」

顔も、筋繊維から内部、骨へと変わる、
脳の部分がなくなるも、意識はあるのは
脊椎があるためなのか?

「ありがとう…」

彼は写真に納めていく。
戻ることはもうない…戻れるなんて、
甘い話はなかった。

「依頼は満足していただけたでしょうか?」
「はい、ありがとうございます、報酬は海外銀行経由で」

「それでは、また、弊社の骨化サービスをよろしくお願いします」

「……」

こうして、彼女の命は失われ、
骨が残る。
この美しき骨に一瞬の命の輝きを見る。

〈絶望報告書〉
甘い話なんてない、絶望、命に復活なんてあるものかという反逆から、この物語展開に至りました。救いもない、幸せにもならない話です。彼は嘘を付いてまで果たしたかったことを、最後になって、愛を知ってしまった。しかし、骨化はもう進んでしまう。されど、もう取り戻せない、最後の瞬間。失って初めて気づくってのを伝えたいものですね。

呪文

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