ログインする ユーザー登録する
投稿企画「#ライブ」開催中!特設ページへ ▶

【マタタビ】24.グリルスの願い

使用したAI その他
(前の話)
【マタタビ】23.復活の儀式
https://www.chichi-pui.com/posts/0c099d6d-7a78-4cd8-932a-92db8b1dc729/
-----

 そのとき、背後からグリルスの悲鳴が聞こえた。

「ぐあぁぁ!」

 振り返ると、グリルスは大蛇の尻尾に締め上げられていた。その様子を見たシロは、ガントレットを巨大化させ、大蛇に立ち向かおうとした。俺は驚いた。シロが自分から戦いに加わるなんて、これまでの旅でほとんどなかったからだ。だが、今回ばかりは相手が悪い。俺はシロに向かって叫んだ。

「戦うな、シロ!」

 シロは一瞬立ち止まり、俺の言葉を聞きながらも、叫んだ。

「でも、このままじゃ、グリルスが死んじゃう!」
「お前も死ぬぞ! 自分の命を優先しろ!」

 俺は、シロを制止した。俺にとっては、会ったばかりの男よりも、シロの命の方が大事だ。だが、シロの目には決意が宿っていた。シロは戦うことを選んだ。それは、彼女が旅を通じて学び、旅人として成長した証だった。

 シロは、巨大化させたガントレットで、大蛇の尻尾を切り裂く。大蛇は、悲鳴のような音を上げてのたうち回った。尻尾が緩み、締め上げられていたグリルスが解放される。シロは、グリルスの元に駆け寄って声をかける。

「グリルス、大丈夫?」
「ありがとう、シロちゃん……」

 グリルスは咳込みながら、シロに礼を言う。そして、ゆっくりと立ち上がる。

「フィズィとの会話、全部聞こえていたよ。君たちを疑ってごめん。ここは、俺に任せて逃げて」
「グリルスも一緒に!」

 シロは、グリルスの手を取る。

「俺は逃げないよ。ここで、君が逃げる時間を稼ぐ」
「どうして私を助けてくれるの?」

 シロは、泣きそうな顔をしながらグリルスに尋ねる。

「それは、シロちゃんが、僕の“推し”だからさ」
「おし?」
「そう。僕は、シロちゃんを初めて見たときから、君のファンなんだ。最初は見た目の可愛さに魅かれただけだったけど、ルースト005で一緒に冒険をして、君の純真さに魅かれていったんだ」

 グリルスは、シロに向かって笑いかける。

「君は、こんなところで死んではいけない。君に争いは似合わないよ。君は、この世界を自由気ままに旅して、楽しく幸せに暮らすんだ!」

 次の瞬間、グリルスはシロに体当たりをして突き飛ばした。先ほどまでシロが立っていた場所に神の繭の触手が伸び、触手の先端がグリルスの腹部を貫いた。

「グリルスー!」

 シロが叫んで手を伸ばす。しかし、その手は空を切り、グリルスの体は触手に取り込まれて見えなくなっていった。

「下がれ、シロ!」

 俺は、近くに落ちていたグリレのタクトを咥え、続けざまにシロに伸びる触手の軌道を逸らした。物を咥えたままでは動きづらいが、俺がシロを守れる方法は、これくらいしか思いつかない。後ろからフィズィの声が響く。

「あらあら、黒猫ちゃん。小さな体で頑張りますねぇ。ですが、あなた方の旅もここで終わりですよ」

 振り返るとフィズィが邪悪な笑みを浮かべて立っていた。その後ろには、大蛇がとぐろを巻き、威圧するように鎌首を持ち上げている。

 協力者であったグリレもグリルスも、もういない。シロは、グリルスを目の前で失ったショックで戦意を喪失している。この状況で、猫である俺にできることなんて何もない。だが、あきらめるわけにはいかなかった。俺は、シロと共に生きることをあきらめたくなかった。

 前方からは大蛇が、後方からは神の繭の触手が襲い掛かってきた、その時——。
ぽっかりと開いた宇宙ステーションの天井付近から、巨大な鉄球が落ちてきて、大蛇の頭部を押し潰した。

-----
(次の話)
【マタタビ】25.助っ人
https://www.chichi-pui.com/posts/1daf4810-02fa-41af-bdc1-13d814e59a43/

呪文

入力なし

藍野 シアンさんの他の作品

藍野 シアンさんの他の作品

すべてを見る

おすすめ

Amazon

トレンド

すべてを見る

ユーザー主催投稿企画

すべてを見る

新着イラスト

すべてを見る

ちちぷいグッズ

ショップを見る