【短編小説付き】一回だけ…ですよ?(前編)
私の部屋に入ってくるや否や、そう言ったのは勇者くんだった。
「えっと……それってどういう……」
「俺と同衾してくださいということです!」
一切迷いのない口調で、改めてその要求が告げられる。
同衾──それはすなわち私と交接がしたいと言っているに他ならなかった。
「お、女の子なら私以外にも……ほら、射手ちゃんの方が年齢も近いし……魔法使いさんなら経験も豊富ですし……」
「俺は神官さんがいいんです! お願いします!」
膝をついた勇者くんは、そう言って更に額を床に擦り付けて声を張り上げた。
旅の最中、東方の国を訪れた際に習った伝統的な『ドゲザ』と呼ばれる体勢だ。
ブシと呼ばれる者たちが死を覚悟した上で、他者に要求を通すために使われたとか使われてないとか……。
ただ、彼が本気なのは痛々しいほどに伝わってきた。
(ど、どうしよう……本気なんだ……。本気で私とそういうことがしたいって思ってるんだ……)
私と勇者くんは、半年前に人類を脅かす魔王討伐の任を受けて王都を発った。
彼は太陽神アポロンの天啓を受けた救世の勇者として、私は奇跡を授かった聖女として。
長い旅の中で、仲間も増えて今や十名を超える大所帯となったが最初は私と彼の二人だけだった。
勇者として使命を授けられたとはいえ、まだ成人も迎えていない若者。
私は彼をずっと弟のように大事に想い、その成長を見守ってきた。
「で、でも……私は……」
長い旅を経て、彼の背中は私の視界に収まりきらないくらいに大きくなった。
今や彼は立派な勇者として、人々の希望を背負っている。
そんな彼が私を欲しているなら、そのひたむきな願いを叶えてあげたいとも思う。
けれど、太陽信仰の聖女はその貞操を神へと捧げた身。
これまで敬虔に生き、信仰の戒律を破ることなんて考えたこともなかった。
私の中で、相反する二つの想いがせめぎ合う。
「こんなこといきなり頼むなんて……失礼だとは思ってます。でも、明日のことを考えたらどうしても……」
私たちは明日、遂に魔王の根城へと向かう。
人類を救済するための最後の戦い。
「だから、どうしても神官さんと……って……」
そして彼の震える声から、私は単なる重荷と異なる恐怖の色を感じ取った。
歴代の勇者に纏わる伝説における最期の物語。
『勇者はその命を賭して魔を打ち払う』
それが真実であると、天啓を受けた彼は知っているのだと察した。
私には、その一端すらも計り知ることの出来ない苦しみ。
にも拘わらず彼は誰も心配させないようにと、真実を自分の内に秘めている。
(そっか……だから、抑えきれなくなって……)
弟扱いし、ずっと守らなければならないと思っていた対象がいつの間にかこんなにも大きく成長していた。
この永く熾烈な戦いの末に、一人だけ絶対の死が約束された少年。
人生の愉しみを全て放棄するほどの滅私をし、その生命を衆生に捧げることが定められた少年。
そんな彼が最期に想った一個人としての願いを、誰が無碍にできるでしょうか。
「一回だけ……ですよ?」
窓の外は既に宵闇の帳が降りきっている。
祭服をはだけて、何も気づかなかったようにいつもの笑みを作る。
太陽神様も、きっと今だけは見ていないはずだと。
*****
「神官さん……すごく、綺麗です……」
息を荒げた彼が、私に覆いかぶさるような姿勢をとる。
上着は脱ぎ去られ、まだ十代とは思えない歴戦の身体が露わになっている。
(は、恥ずかしい……)
彼たっての願いで、照明は落とされていない。
真っ赤になった顔も、胸も、秘部も全てが彼の前に曝け出されている。
「ど、どうしたら……いいのかな……?」
つい、情けなくも尋ねてしまう。
最初は年上の自分がリードすべきだと思ってたのに、いざとなると凄まじい羞恥に頭がパニックを起こしそうなほどに混乱している。
そもそも戒律に殉じてきた自分には、もとより無理な話だったのだ。
「大丈夫です。俺が……」
「んっ……っちゅ……」
そんな私の不安をすくい取るように、優しく唇が重ねられた。
生まれてはじめての接吻。
戒律に反する行為であるという背徳感よりも、その胸に染み入るような温もりが勝る。
「んふぅ……はぁ……」
時折、息継ぎするように顔を離して、目を見つめ合う。
そして、再び角度を変えて口づけを交わす。
呼吸をするのも忘れるくらい夢中になって繰り返した。
そんなふわふわとした心地の良さに浸っていると、不意に何かが股間に触れた。
「……あっ!」
その未知の感覚に思わず、甲高い声が漏れ出る。
「す、すいません! 痛かったですか?」
「ううん……ちょっとびっくりしちゃっただけだから……」
彼の指先が私の不浄な部分をなぞるように触れていた。
自分で触るのですら湯浴みの時に洗う程度。
自慰なんて当然したこともない。
よもや誰かに触られるなんて想像したこともなかった。
「じゃあ、続けますね……?」
「うん、勇者くんの好きにしていいよ……」
私の言葉に、彼は指の動きで返答した。
さっきよりも優しく、私の秘部が撫でられる。
割れ目に沿うように上下に。
「んっ……あっ……」
未知の感覚に脳が痺れる。
イケナイコトをしているという感覚がどんどん強くなってくる。
──クチュ……。
接吻のそれとは違う水音が、静寂の室内に響く。
──クチュクチュ……。
彼の優しい指使いに合わせて、音はどんどん大きくなっていく。
それは私の身体が彼を受け入れるための準備を始めている証拠だった。
「神官さん、すごく濡れてきました……」
「そ、そういうこと言わないでぇ……恥ずかしいから……」
「でも、ほら……」
そう言って彼が差し出した右手は、私の分泌液によって淫靡に光っていた。
「あぁ……もう、ばかぁ……」
恥ずかしさのあまりに、両手で顔を覆う。
きっと耳まで真っ赤になっている。
「神官さん……俺、もう……」
耳元で、余裕のなさそうな声で囁かれる。
その意味を理解して、私は小さく首を縦に振った。
「いいよ……私が君を男にしてあげる……」
精一杯の余裕を振り絞って、彼の最初の言葉への意趣返しを行う。
それが彼の理性のタガを外してしまったのか、両足を掴まれて大きく開かれた。
「……きゃっ!」
「神官さん……神官さん……」
必死に私を呼ぶ彼の声。
開かれた太ももの間から、雄々しく猛った彼の性器が見えた。
(あ、あんなに大っきいの……!?)
比較対象は知らないけれど、他の女性陣の話でどういうものなのかを耳に挟んだことはある。
今から私を抱こうとしている彼のそれは、平均的なそれよりもかなり大きいことは分かった。
「ずっと、ずっと……こうなりたいと思ってました……」
私の意識は彼がうわ言のように述べる言葉ではなく、その猛々しい男性自身に釘付けになっていた。
(あれが今から……私の中に……)
無意識的に、生唾を飲み込んでしまう。
想像するだけで、お腹の奥深くがきゅっと切なくなる。
ずっと弟のように思ってきた彼。
けれど今この瞬間からは私は女で、彼は男なのだと本能で理解させられた。
(後半に続く)
◆◆◆◆◆
後半投稿しました。
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