怪談パンプキン灯籠
「久しぶりだなあ、こんなふうにここでかぼちゃを食べるのは…
昔は妹がかぼちゃサラダをよく作ってくれたっけ…食べきれなかったもんなあ。今頃どうしているかな」
二人組
「ねえ、あそこの彼、なんかかっこよくない?思い切って声かけてみよっか」
「うん、なんかカッコかわいいよね~ ドキドキするけど行ってみよっか」
そばに居た少女
「あんたたち、悪いこたぁ言わねえ、やめときな。」
二人組
「え~!何なの、私たちは行くわよ!」
少女
「しゃあねえなあ…」
少女が何やら魔法を唱えると、かぼちゃが転がっていき、二人組がすってんころりんとこけてしまった。
二人組
「いててて…
何すんのよ…
かぼちゃに埋もれちゃったない」
少女
「怪我させないためにだ。感謝しな。あの人は私のにいちゃんでな」
二人組
「だからってこんなことしなくてもいいじゃない」
少女
「にいちゃんは、去年亡くなったんだ。ハロウィーンで帰って来てるだけなのさ」
起き上がった二人組は顔を見合わせる。
少女
「今時優しいにいちゃんでな。自分が生きるのをサボって他人に押し付けたりせずに、他人のことをすごく考えて背負いこんじゃちゃって…
他人に迷惑かけないことばかり考えてさ。
まあ、自由に自分の思うことをやっていってほしいなと、思った矢先にさ。
会うと辛いから、遠くから眺めているだけ」
二人組
「そうだったの…」
少女は軽く頷いた。
かぼちゃ売り
「よう、そこのにいちゃん!
ひとつ買っていかねえかい?」
少年
「あ、でももうすぐ自分は…」
かぼちゃ売り
「わかってるよ、あの世にまた帰っちまうんだろ?
私は実は見えるタイプだし、第一あんた、妹想いだから結構色んな人に見えちまうくらいに今なってるよ。
さっき、女の子があんたをじっと見てたよ。」
少年「えっ」
かぼちゃ売り
「辛いから会わないのだろうけど、じっと見ててさ。
少しおませだけど一途な感じがよかったねえ。
しっかりあんたにあたたかいものを祈り願っていたよ。」
少年「…」
かぼちゃ売り「時間ぎれなんだろ?
まああの世へのお供に、持っていけ。
魔除けで強力だよ。あたたかいものはあの世へ持っていけるさ」
少年が涙を拭う。
かぼちゃ売り「さ、持っていきな、生きた証のあたたかさがまだこの世にも残ってるってことさ。あの世へキックバックだよ。いいもの見せてもらったからタダで持ってけ~プレゼントだよ」
少年「ありがとう。また、来年くるよ。」
少年の体が赤く光り始める。
それぞれが本来持ち得る暖かい巡りの中で、彼は行った、だけれど、また来年も来ることができるようだ。
ー番外ー
離れて見ていた獣和服の少女
「ちぇっ
せっかくいい男だと思ったのに…
しょうがない、家にかぼちゃ持ち帰る事にするか」
いろんな人生がある。
呪文
入力なし