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高級ジュエリーショップの窓に飾られていたその宝石は、冷たい青の輝きを放っていた。
リサは、その宝石に魅了されるように足を止め、見入っていた。
宝石店のオーナーは、彼女の視線を感じ取ると微笑みながら言った。

「その宝石には伝説がありますよ。人魚の涙でできていると」

リサの好奇心がそそられた。「人魚の涙?」

「ええ。年頃の女性がこの宝石を身につけて眠ると、夢の中で人魚になり、楽しく海を泳ぐと言われています。
 ただし、満月の夜にだけは決して身につけてはなりません。人魚に呼ばれて海に身を投げてしまうからです」

その夜、リサは宝石を購入し、家に帰ると宝石を手にして眺めた。
青い光が微かに揺らめき、彼女はその魅力に引き込まれた。

数日後、リサはその宝石を首にかけて眠りについた。
その夜、彼女は確かに夢を見た。
海の中を自由に泳ぎ、美しい魚たちと戯れる自分の姿を。
夢の中で感じる喜びは現実のものとは比べものにならなかった。

しかし、次の満月の夜が近づくにつれ、リサの心には不安が募り始めた。
宝石の伝説を思い出しながらも、彼女は好奇心に抗えなかった。
その夜、満月の光が窓から差し込む中、彼女は再び宝石を身につけて眠りについた。

夢の中で彼女は再び海を泳いでいたが、今回は何かが違った。冷たい海の底から誰かの声が聞こえてきた。
悲しげで、切ない声。
振り返ると、そこには美しい人魚がいた。
彼女の目には悲しみと絶望が漂っていた。

「私を助けて…」と人魚は囁いた。

その瞬間、リサは目を覚ました。
しかし、夢と現実の境界は曖昧になり、彼女はまるで夢の続きのようにベッドから起き上がり、窓を開け、海に向かって歩き始めた。

海岸にたどり着くと、リサは冷たい波に足を踏み入れた。
人魚の声が耳元で囁き続け、彼女の意識は次第に薄れていった。
最後の瞬間、彼女は宝石の真相を悟った。

その宝石を作るためにその人魚は捕まり、最期のときまで海に戻れなかった。
涙の宝石は、彼女の望郷の結晶だったのだ。
だからこそ、夢の中で海を泳ぐ。
そして、満月の夜には涙の宝石の力がさらに増す。
せめて私の思いだけでも、あの深き深き深淵の海の底に一緒に連れて行ってと、身につけた者を海に誘うのだ。

リサはそのまま波に呑まれ、静かに消えていった。彼女の姿が消えた後、海は再び静寂を取り戻し、満月の光が冷たく海面を照らしていた。

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