戦略偵察：世界は丸かった

2023/10/01

使用したAI その他

次元衝突事変発生からしばらく経った。
都市間ライフラインの寸断、衛星通信網の喪失、異世界とのコンタクト等の大混乱からも立ち直りつつあった。

だが、落ち着いてくると「そもそもここはどこなのか？」という根本的な疑問が残った。
対話が続いているセントレイクも知らなかったし、交戦中のヒノイも、どうやら分かってないらしい。
星空が違う、重力加速度が違う、方位磁針の向きが違う等、ここが故郷の惑星でない証拠はある。
だが、そもそも「複数の異世界が衝突する」など、どんな理論も想定していなかった。
さすがにリングワールドではなさそうだが、そもそも物理法則の違う平面世界だったり、ダイソン球の可能性は否定できない。
宇宙空間、または超高空から観察すれば簡単に分かる。だがこの世界の宇宙へのアクセスは軌道エレベータに移行済みだった。
ロケットはとうに廃れ、高空からの観測手段は絶たれたと思われた。

だが、好事家の存在が危機を救った。
彼らは百年以上前の再利用型ロケットを現代のHAドライブロケットに改造、技術文化保存イベントをやっていた。
それを情報局が拝み倒し、高額の使用料と「必ず壊れても復元して変換すること」を条件に借り受けた。

そこからは早かった。
観測機材は、今ならロボット1体で事足りる。ロフテッド軌道で可能な限り高空から観測するため、軌道カプセルも抜きにロボットだけをフェアリング内に詰め込むと、満タンまで水を詰め込んだロケットは慌ただしく飛び上がった。

観測担当の彼女が暗闇から解放されると、そこは宇宙だった。
更に振動に耐えること数分、ロックから解放されると、彼女は体一つで弾道飛行を始めた。
「……やっぱりここって惑星だったんだ」
彼女はそう呟いた。
地表と連絡できる通信機材はない。今は彼女は一人きりだ。
眼下に見える世界の様子は、故郷の惑星ととてもよく似ていた。
レーダー観測による対地高度、惑星の視直径の推移を考えると、どうやら直径や質量も故郷と似たり寄ったりのようだ。
平面世界論を唱えていた人物のことを思い出し、彼女はくすっと笑った。

とはいえ、地表の様子は故郷とまるで違う。ここは新しい世界だ。
これは全てが初めての冒険になる。帰還もそうだ。
順調にいけばセントレイク付近に落下するが、それは全てがうまく行った場合。
再突入時の大気上層バウンド飛行の成否は、彼女の腕にかかっている。
そろそろ不要になった部品を分離し、再突入のタイミングだ。
「それじゃ、またね」
彼女は宇宙にそう告げると、再突入マニューバを開始した。
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