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アキラの追憶・8

使用したAI Stable Diffusion
「さてさて、可愛い可愛いボクの妹ちゃん♪今日はお勉強だよ〜♪今日のボクは先生なのだ♪」
私の前に何処から持ってきたのか数冊の本を積み重ね、フンス♪と胸を張るお姉ちゃん。
「…私…文字の読み書きできないんだけど…」
一冊の本を試しに手にとって見ては見るものの、やっぱり何が書いてあるかわからない。
「だ・か・ら・お勉強だよ♪読み書きできるようになりたいだろう?」
「……困ったコトないし…別にいいかな?」
興味がなかった訳ではない。
けれど、自分にはできるようになるとは思えなかったから。
お姉ちゃんはそんな私の目の前で一度にっこり微笑むと、徐ろに私の両頬を引っ張った。
みょ~ん、と、左右に伸びる私の両頬。
「ん~~?ボクは『頑張る〜♪』ってセリフ聞きたいなぁ?」
「ひはい!ひはい!(いたいいたい)」
「頑張るかい?」
「コクコクコクコク」
容赦なく引っ張るから頷くしかなかった。


「…ま、とりあえずは簡単なモノから読める様になろうか。そんな訳でまずは絵本からだよ♪」
もうなんでもいいよ…とほっぺたを擦りながら心の中で呟く。
「絵本は2冊あるよ?どっちがいい?」
そう言ってお姉ちゃんは2冊の本を取り出した。
ひとつは、まん丸に腫れた顔の人がニコニコしてる絵が描いてある本。
もうひとつは、赤いフードと赤い服を着ている女の子の絵が描いてある。
「こっちのまん丸顔の方は…えっと…パンパンマンだってさ。絶対に敵を殴らない正義のヒーロー。…でも最後は結局鉄拳制裁するらしいよ?ジャパニーズヒーローはクレイジーだね♪」
お姉ちゃんは楽しそうに笑う。
よくわからないけれど…お姉ちゃんはこちらが好みなのが何となくわかった。
「こっちの方は…えっと…赤ずきんちゃんだね。この赤い服の女の子の…ちょっとした冒険的な?うん…可愛い女の子だね♪」
―――赤。
その言葉に私はほんの一瞬、身を固くする。
赤は…。
私が嫌いな色だったから。

「……どうしたんだい?」
そんな私の些細な変化に気づいてお姉ちゃんは私の顔を覗き込む。
「……赤は嫌い」
赤と聞くとイメージしてしまう。
「どうして?」
青く澄んだ瞳で見つめてくるお姉ちゃん。
「…だって、赤は…、痛い色だから……」
私は無意識で身体に巻かれた包帯を擦っていた。

この時には自分が普通、『正常』ではない事を何となく理解していた。
普通であるなら、あの本に描かれた赤い服の女の子をみて可愛いって感じるのだろうけれど。
私にとっては嫌悪感でしかなくて。
血と痛みの象徴だから……。

「そっか…。でも、それは違うよ?妹ちゃん♪」
「……?」
「例えばだけど…、キミのその赤い瞳。とても綺麗でキラキラに赤く輝くその瞳はルビーアイズって言ってね、幸せの象徴なんだよ」
そう言ってお姉ちゃんは微笑んだ。
「…だから、赤は決して痛みや苦しみの象徴なんかじゃない。幸せと幸運の象徴なんだよ」

―――赤い色は。
幸せと幸運の象徴。
お姉ちゃんの言葉で、私の認識が少しずつ改変されていく。

お姉ちゃんは…本当に魔法使いなんだろうか?

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