フェンテスのニュースライター
少女――ヴェリテは手元の携帯端末に視線を落とし、仏頂面で言った。
フェンテス内のネットワークに接続され、あらゆる情報を提供する携帯端末は、
その万能性に対していささか勿体ないほどシンプルな表記で、フェンテス政府が提供する現在時刻を示していた。
「時間も情報も足りてない。現場も大混乱じゃ無理もないか」
ヴェリテの指が端末を叩き、いくつかの操作が施されると、端末表面からホログラムのディスプレイが立ち上がった。
更にディスプレイを摘み、開くと、彼女の操作に呼応するように、ディスプレイは投影される内容をフェンテス内での出来事を報じるネット記事群へと変えた。
ヴェリテの視線がディスプレイを流れて、その行き先は直近の閲覧数ランキング上位を示すリストだった。
フェンテス内で起きている混乱を報じたそれらの記事が示すユーザー閲覧数は、
かつて、ニュースサイトの歴代最多閲覧数を叩き出した一流芸能事務所社長のスキャンダル記事に数倍のスコアを着けていた。
いくつかの記事の執筆者の欄には――ヴェリテの名前。
「みんな真実を求めてる。この世界で何が起こっているのか、何を信じればいいのか……でも」
どこか憂うような声色で、ヴェリテはつぶやく。
「やっぱり、自分の目で確かめるしかない、か」
ヴェリテの顔に光が差した。
窓の外に目を向けると、遠景に並んだ高層ビル間から、輝く光の塊が顔をのぞかせていた。
眩しさを覚え、照らされた皮膚にわずかな温かみが生まれる。
彼女の記憶の中と何ら変わらない、しかし決定的に異なっている光景。
――次元衝突領域「グランシュライデ」にフェンテスの国土が転移して数日目の朝だ。
元の次元から抉り取られるように転移したフェンテスの国土から多数の水源と設備が消失し、
インフラの断絶を伝えるため国中に響き渡った警告音は、今は停止している――正確には強制停止されている。
水源から得られるエネルギー供給の多くが立たれ、国を動かす動力が不足する"可能性がある"ことが報じられ、
また国土の周辺が、明らかに観測上未知の空間に変容していることが伝えられたのが先日のことだ。
人々はさらなる情報を求めたが、結局は政府ですら何が起こっているのか具体的な観測ができておらず、
また場当たり的に提供された情報がさらなる憶測を呼び、国土はただひたすらに混乱の最中にあった。
「やっぱり、こんなところに座ってるだけじゃ、なにもわからないね」
ヴェリテは立ち上がると、再び携帯端末に指先を乗せた。
ディスプレイ上に既知の友人を呼び出すチャット機能を起動し、流れるような指捌きで文字を入力していく。
「ちょっと出掛けてくるね、掃除と洗濯、あと軽食も用意しておいて」
ディスプレイから視線は外さずに投げかけられた短い言葉に、足元に鎮座していたロボットが即座に反応した。
「ライブルベーカリーでパンを買って帰ってくださいますか。少々在庫が心許ありませんので」
「いいけど、たぶんまた粉まみれになるよ!」
「主人の好みを踏まえるのも、重要なことですので――」
ロボットがそこまで告げたところで、会話を遮るように「ゴゥン」というが部屋の中に響いた。
玄関の扉が開閉する音――荷物を抱え、ヴェリテが部屋を出ていくところだった。
「いってきます!」
「……お早いお帰りを」
今は居ない主に向けて呼びかけたロボットは、しかし返事には期待していなかった様子で、
静寂の戻った部屋のホコリを粛々と吸い取る作業に入るのであった。
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グランシュライデにフェンテスで参加します。
正直日程的にどこまで描けるかわからないのが正直なところですが…。
ニュースライターのヴェリテさんが、転移直後で混乱に満ちたフェンテス内を駆け回ったりする予定です。
ある程度キャプション付きで描いていきたいですが、まともに文章を打鍵するのは数年ぶりです。
めちゃくちゃ時間がかかるし自分でも質が高くは感じられないので、これもできる範囲でですね…。
呪文
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イラストの呪文(プロンプト)
イラストの呪文(ネガティブプロンプト)
- Steps 30
- Scale 7
- Seed 1483936543
- Sampler DPM++ 2M SDE Karras
- Strength
- Noise 0.55
- Steps 30
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- Sampler DPM++ 2M SDE Karras
- Noise 0.55