3人で星をみた夜 (街と水たまり、少女69)
王都行きの汽車に乗る前日、最後に三人で星をみたんだ。
初夏の涼しい空気と水の匂い。いまでも鮮明に思い出す。
これまでのこと、これからのこと、たくさん話して、
離れ離れになっても僕たちは一緒だと誓いあった。
あれから10年、手紙のやりとりはあったけど、一度も直接会うことはなかった。
僕はとうとう、あの街には帰らなかった。
王都の激しい生活の変化に戸惑い、田舎者に見られないよう、精一杯背伸びをして、
それでなんとか馴染んだ頃には、僕にとってあの街は遠いものになっていた。
いま、僕の手元には一通の手紙がある。
二人が結婚することになったこと、できれば僕にも来てほしいと、そう伝える手紙だった。
僕は二人を祝福しなければならなかった。
だのに、僕の中にあるのは疎外感と郷愁ばかりだった。
あの頃、三人にあった共感、友情、信頼。
僕は自らそれを断ち切ってしまったけど、二人は10年、それを育んで結ばれたのだ。
この都会で真に心許せる者もなく、毎日を時間に追われて生きる僕は、空虚で愚かだった。
だが、取り戻すことはできないだろう。10年の時の流れは、僕と二人を隔ててしまった。
僕にはあの頃の純真な気持ちが、もう自分の中には存在しないことを理解できてしまうから。
しばらく煙草を燻らせながら星をみた夜を懐古して、それから僕は暖炉の火に手紙を投げ入れた。
明日も仕事がはやい。備えなければならない。
僕があの夜を思い出すことは、もうないだろう。
さようなら、少年の日々。
1枚めはSDのi2i。2枚めがDalleで作成した元絵。
呪文
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