出立。外界の風景。-ロムの記録

2024/07/29

使用したAI その他

「RoM……Read Only Memoryですか？」
「いや、Record of Memoryだよ」

ロム。
それが博士から貰った私の名前だった。

シンカロンと呼ばれる人間と遜色のないアンドロイドが遍在するこの世界で、私は博士によって作られた。
博士は嘗て世界中を巡る旅人だったという。しかし、ある日を境にシェルターに閉じ込められ、外界から隔絶された生活を送ることになった。

「本当はね、シェルターなんか入りたくなかったよ。死ぬその時まで、私は自由な旅人でありたいと、そう思っていた」

そう語る博士は、けれども自らシェルターに入った。

「一つの夢ができたのさ。そう、それが君という存在だ」
「私が夢、ですか？」

疑問に首をかしげる私に、博士は一冊の真新しいスケッチブックを手渡してきた。

「君に、私の代わりに旅をしてほしいんだ。
　こう見えて、私は若くない。分かるんだ。シェルターが解放される頃には、きっともうろくに動けない、いや、もしかするととっくに死んでしまっているかもしれない、ってね。
　だから、君には旅をして、その目で見たものをここに描いてほしいんだ」

乾いた笑いを吐き出しながら言う博士に、私はさらなる疑問を投げかける。

「ですが博士。私には描画用のAIが搭載されていません」

私に搭載されているのは、言語処理特化型AIと、視覚からの情報分析機能、あとは膨大な記憶領域があるだけだ。
今の時代、アンドロイドは人間と大差なく生活できる。会話だけではなく感情表現も、身振り手振りや細かいニュアンスも理解できる。それこそ、絵の描写に関しても人間に劣らない。
搭載されている機能だけ見れば、私は旧時代の古いアンドロイド程度の性能しかない。本来あるべきはずの機能が削られた場所は、全て記憶領域に置き換えられている。
だが、博士は全てわかっているというように、首を徐ろに横に振る。

「あれは駄目だ。描画用AIというのは、記録から必要な情報を選び、組み合わせて出力するものだ。
　私が君に描いて欲しいのは、君が見て、感じた世界なんだ。そこに他の誰の記録も必要ない」

描くための機能がないのに、どうやって描けばいいのだろう。未だ納得のいかない私の様子を理解したのか、博士は小さく微笑む。

「難しく考える必要はないよ。ただ君は見たものを、手に取った画材で見たままに描こうとするだけでいい。
　やってみればわかるさ。それがどれだけ難しく複雑で、そして面白いかということを」

結局、博士はこれ以上私に機能を追加することもなく、十余年ほどしてその息を引き取った。その間、博士は旅の思い出を語り続け、私はそれを聞き続けた。
「もう旅ができないことよりも、君を見送れないことの方が残念だ」と言い残し、静かな早朝に目を閉じた。
その翌年、このシェルターはロックダウンが解除された。多くの人々やアンドロイドが各々の目的や夢を抱いて外へと歩み出す中、私もその流れに続くことにした。
遺されたスケッチブックと、いくつもの画材、それからいくつかの便利な道具をバックパックに詰め込み、それを背負う。

「大丈夫さ、君の身体は結構丈夫に作られているから。私の使っていた道具もあるし、どこへだっていける。」

そんな無責任な博士の言葉が思い起こされる。
外の世界は一体どんなところなのだろう。

重々しい口を開けたシェルターの扉をくぐる。太陽の光の向こうへ、生まれて初めて外界へ踏み出した。
そこには青い空と透明な風、眩しい光が在った。
私は、これを描けるのだろうか？

呪文

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イラストの呪文（プロンプト）

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