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『あの姉 2020』

使用したAI Dalle
あの姉の三重からの遁走劇の背景に看板娘がいたことに、あの姉の一家は少しも気付いていなかった。
我が娘の修得単位の少なさは大学からの通知で両親も知るところではあったが、それでもあの姉は大学至近の江戸橋の下宿で寝起きし、せめて午後には授業に出席しているものだと思っていた。
それが、いつの間にか三重の赤いおじさんの桑名の家に転がり込み、看板娘が学校に行っている日中にはロボを作り、夜は看板娘とおたのしみだったのである。それが破れた果ての帰駿は年の瀬も押し迫る冬至の頃で、一家は最初ただの帰省だと思っていた。
それどころか、あの姉はこれらの経緯を家族に話したことすらないのだ。あの姉が看板娘と寝たことも、男前姉ちゃんと寝たことも、機ぐるまれて熱ることも、ヒロピンを観て濡れることも、ヒロピンに遭って感じることも、一家は誰も知らない。
だから当初妹視点で語られていたこの連載でさえ、こっそり神視点に変えられているではないか。


あの姉は無口というほど無口でもないし、ぱっと見だけでいきなり社会性の欠如に感付かれることもそう多くはない。大学の映画研究サークルのロボ映画制作では赤いおじさんの全面協力を取り付ける交渉をほぼ一人でこなしたし、男前姉ちゃんも口説き落としたし、看板娘にだってすんなり受け入れられた。
しかし、どうしてかあの姉には元々ほとんど友達がいない。高専時代も当初は寮生活をしたものの、やはり友達ができず2年目からは実家からの通学を詐称して沼津でアパート生活を始めている。
これから訪ねると急にメールで予告してきた母親に焦って、アパートの部屋で作っていた大きなロボをベランダに隠そうとしたが狭すぎ、屋上に置いておいたら強風に飛ばされてなくなってしまったという話をあの姉は、妹だけにはしている。
高専を中退して静岡の実家に戻った後は、メイド服とゴスロリ服の区別も付かないオーナーが経営する場末感漂うメイドカフェに3年ほど在籍していた。ゆりっぺとはどうもそこで知り合ったようだが、あの娘も今は社会人だ。

あの姉が予備校に通うでもないまま20歳の誕生日を迎えたのは成人式の日だった。友達がいないながらに恩師を囲んだ二次会にまで参加したあの姉は、帰り際に初めてあの娘に話しかけたのだった。
あの娘とは、4年半前の、高専一年の夏の日にあの姉を嫉妬させた、住宅展示場のキャラショーのあの娘こと真希ちゃんのことである。

(つづく)

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