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真夜中、ふと目が覚めた。
夜中は戦も一時中断され、刹那の静寂が訪れる。
少し風にあたろうと、ふらふらと小屋をうち出でて、近くを流れる小川に着いた。
なんとなしに、その川を上流の方へ辿ってみると、水の出どころへと続く林の暗がりの中に、ぼんやりと何か光るものが見えた。
普通であれば、そんな妖しいものに近づくことは無かっただろう。
ただその夜は、何の気まぐれか、気がつけばその明かりに誘われるように近づいてしまっていた。

小川の縁には、一人の少女がいた。
ただ、その少女に脚はなく、代わりに綺麗な赤い魚のヒレがあった。
その少女の周りには、紅い金魚が泳ぐように漂っている。

妖だ、逃げなければ……。
そう思った私が踵を返すよりも先に、少女は私に気がついて微笑んだ。
その笑顔があまりにもどこか寂し気で、私は逃げることを躊躇してしまった。
立ち止まった私に、彼女は細い声で語り掛けた。

「私の話、きいてくださる?」

無意識のうちに頷いてしまい、彼女はゆっくり語り始めた。


私の両親は、普通の人間でした。
けれども、悪い人間でした。
家で飼っていた金魚よりも、隣家の金魚の方が美しいと評判なことを妬んで、殺してしまったのです。
それから生まれた私は、呪われて体の半分を金魚に変えられていたそうです。
気味悪がった両親は、私を川に投げ捨てました。

ひとりぼっちの私に、金魚が数匹話しかけてきました。
金魚たちは増えすぎて、いらないと捨てられたそうです。
お互いを哀れに思った私達は、川の中でひっそりと暮らしました。

けれども、私は半分人間で、彼らはただの金魚です。
彼らは次々死んでいき、亡骸だけを残していなくなってしまいました。
私はまた一人になってしまったと、亡骸を抱えて泣きました。
しかしその時、不思議なことに、私は自分の身に宿った不思議な力に気がつきました。
すると、天から伸びた糸が彼らを持ち上げて、私の周りを泳ぎ始めました。
まるで黄泉帰って、私のことを励ましてくれているようでした。

言葉はもう話せないけれど、彼らは今もこうして、私の傍にいてくれているのです。
この糸が繋がっている限り、彼らはずっと私と一緒なのです。


「あなたも、私の傍にいてくれますか?」

微笑みと共に、白い糸がちらりと光った。
少女の笑みは、悲しく、儚く、狂気に満ちていた。

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