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機械の国のアリス:2章:発電エリア

使用したAI Stable Diffusion
【1枚め】
翌朝、テレスに連れられて、アリスは北の境界を目指します。
北の境界って遠いのかしら? とアリスは少し心配でしたが、テレス曰く、車なら1時間とのこと。それって歩いたら半日くらいかかりそうですね。
長旅に備えて、まずは朝食をとります。食事は配給制になっていて、街の何箇所かで配っているのだとか。昨日、センターでアリスがいただいたパイと紅茶も、配給品だったようです。
テレスと近場の配給所に行き、そこでリンゴと蜂蜜を食べました。甘いものを取って、少し幸せなふたり。しかしこういった配給品も、年々種類が減ってきていて、生産性の減退は明らか、とテレスは言います。
「前には生ハムメロンもあったけど、もう見かけなくなっちゃったね。アリスちゃんがクィーン様と話して、また生ハムメロンを作ってくれるようお願いして欲しいな。……ねぇアリスちゃん、ほんとに境界を超えるの? とっても危ないらしいよ?」
昨晩もじっくり話し合い、納得してくれたはずのテレスですが、できれば思いとどまって欲しい気持ちは変わらないようです。
「心配してくれてありがとう。でも、私、危険なことには慣れているし、この世界も、私にそれを期待してるのじゃないかしら。アリスを呼ぶということはね、世界をひっくり返して欲しい、そういうことよ」
「……うん、わかった。私もアリスちゃんならなんだかできる気がするよ。じゃあ行こうか」

【2枚め】
テレスはアリスを街のはずれに案内します。そこにはレンタカーショップがありました。どうやら徒歩は免れそうだと知り、アリスはほっと胸を撫で下ろします。
「幼児向けオフロードカー1台」
テレスがマイクに向かってオーダーすると、奥の車庫からジープが1台、無人で走ってきました。どうやらこの車もロボットのようです。テレスに言われ、ジープの助手席に乗り込むアリス。
「北の境界まで」テレスが命じると「目的地ガ入力サレマシタ。安全運転デムカイマス。所要時間ハ53分見込ミ」と機械音声が答えます。
「これはね、一番昔のロボットさんだよ。このロボットさんが最新だったころは、みんなロボットやAIにすごく期待していたんだって。シンプルな構造だから、いまでもメンテナンスで動く機体がたくさん残ってるんだ」
テレスはそう説明しながら、どこからかサングラスを取り出してかけます。
「どらいぶでーとでは、運転先の人がサングラスをつけて格好をつけるのが伝統らしいよ。まあ、この車ロボットさんが誕生した時代でも、すでに廃れた伝統だったらしいけど、カイコシュギだって大人が言ってた」
「ふーん、スタイルってやつかしら。大人はめんどくさいわね」
「それに大人は働かないしね。私たち子供がしっかりしないと」
うんうん、とふたりは頷き、自動走行に身を任せます。
しばらくガタガタの未舗装道を進むと、森が開けてきて、北のほうは一面の大草原でした。暖かい日差しとやわかかな風が、ドライブを楽しいものにしています。
ですが30分以上走っても、先の方までずっとずっと大草原なのです。境界線になるような、壁や川といったものは見当たりません。
「テレスちゃん、境界まであとどれくらいかしら? なんだかそれっぽいものは見えないようだけど」
「境界はね、目には見えないんだよ。見えない壁があって、先に進めないんだよ。私も境界に来るのは初めてだから、先生から聞いた話しだけどねっ」
アリスに一抹の不安がよぎります。このまま見えない壁に激突して、前途有望な女子2名が失われたら、それは世界の損失にならないでしょうか。

しかし、アリス不安は杞憂でした。車ロボットがこう告げます。
「モウスグ目的地周辺デス。モウスグ目的地周辺デス」
道の先には大きな看板が立っていました。
『ここ北の境界。無理に進むな! カロリーを消費して危険!』
看板には大きな赤い文字で、そんなメッセージが書かれていました。
車ロボットは看板の前で、優雅とは言い難いブレーキングを決めながら、ピタッと止まりました。
「ここ……みたいだね」
車から降りたふたりは、恐る恐る看板より先のほうに手を伸ばします。
むにょ。柔らかい空気抵抗があり、境界ってこれかという実感がありました。
「うわー、すごい柔らかい。なんだろこの柔らかさ……そうだ! 二の腕のぷにぷに感といっしょだよ!」
テレスは嬉しそうに、自分の二の腕と境界を揉み比べします。
しかしアリスは学校のクラスメートから、二の腕の柔らかさは胸の柔らかさと同じ! という俗説を聞かされていたので、紳士が歓喜しそうな強度だな、と心のなかで思いました。
「でもこれなら私もアリスちゃんと一緒に行けるかも!」
喜び勇んで境界へと突っ込むテレス。しかし、水中にいる以上の空気抵抗が、テレスの体力を奪っていきます。
「カロリーが! 朝食べたリンゴと蜂蜜が!」
テレスはなんとかこちらに戻ってくると、ゼーハーゼーハーしながら言いました。
「アリスちゃん、これはダイエットのとき以外は進まないほうがいいよっ」
ですが、アリスには帰宅ルートの開拓及び人類衰退回避の嘆願という重要なミッションがあり、この程度のことで引き返すわけにはいきません。
「うーん、こんな抵抗がずっと続いたら、1kmいかないで餓死するなあ……」
2,3歩進んだだけで、困ったものだと挫折しかけたアリスでしたが、そのときどこからともなく、声が聞こえてきました。
『適合確認。ゲートを開放する』
その声とともに、さきほどまでうっとしいほど体に纏わりついていた空気抵抗が、すっとなくなりました。思わず前のめりに地面に突っ込むアリス。
「な、なんなのかしら!?」
前掛けについた砂を払いながら、アリスは立ち上がります。
「アリスちゃ~ん」
後ろを振り返ると、テレスは相変わらず空気抵抗でジタバタしています。
「どうやらっ、アリスちゃんはっ、先生が言う通りっ、未知の存在だねっ」
なんとかアリスに追いつこうともがくテレス。アリスはそんなテレスに近づくと、その手にそっと飴を握らせます。
「ここまでありがとう、テレスちゃん。ここからは、私ひとりで行くよ。泊めてくれて嬉しかった。夜たくさんおしゃべりしたのも楽しかった。後は私に任せて、ね?」
テレスは哀しそうな顔をしましたが、カロリーの消費が半端なく、渋々と納得しました。
「アリスちゃん、きっとクィーン様のところへ辿り着けるよ。私も、お友達も、みんな応援しているからねっ」
姿が見えなくなるまでずっと手を振るテレスと離れ、アリスは新エリアに突入して行くのでした。

【3枚め】
ここからはちょっと巻いていきますよ、全然終わらない感じですからねっ。

アリスが侵入したエリアはしばらく、同じような草原が続いていましたが、ひとつ丘を越えると、その向こうにはたくさんの光る板が敷き詰めらていました。それが太陽に光を反射して、とても眩しいのです。
ここはAIの食料である電気を大量に作る、メガソーラー施設なのでした。
施設内に無断で立ち入るアリス。
このエリアには人間はいないのかと思っていましたが、なんだかそこそこ、子供がいるのです。
そのうちのひとり、女の子を掴まえて、お得意の飴ちゃん買収により情報を得るアリス。
なんでも、人間には特に仕事はないのですが、AIロボットのなかには人間、特に人間の子供が側にいると生産性が上がるタイプがいるらしく、各施設に一定数の子供を住まわせているのだとか。
食べ物も着る物もちゃんと与えられて、暮らしには不自由はないのですが、お父さん、お母さんに会えないのは寂しい、とその女の子は言いました。
「そういった各種意見も総括して私がクィーンに伝えるから、次のエリアにはどうやったら進めるか教えてもらえるかしら?」
「え? お姉ちゃん、もしかしてエリア移動できるの? だってお姉ちゃんこのエリアで見たことない人だし」
なかなか察しのいい子供です。
「ええそうよ、お姉ちゃんはできる女なの。前のエリアも1日で抜けてきたから、ここも即抜けしたいのよね。何か方法を知らないかしら?」
「他のエリアに行くには、工場長の許可がいるよ」
「工場長? それはロボットかしら?」
「最先端AIの新型ロボットだよ。すごく優秀だってみんなが言ってた」
「そのロボットさんは、私が頼んだら許可をくれそうなロボットさんかしら?」
「お姉ちゃんなら楽勝だよ!」
「え? なぜに?」
「工場長は人間の子供が大好きなの。特にお姉ちゃんぐらいの年頃の女の子が大好きなんだって!」
「やべぇ……」
つい本音が漏れてしまうアリス。人間にもそういう大人がいましたが、最先端AIでもその宿業からは逃れられないのでしょうか?

【4枚め】
そのとき、アリスの背後から大きな足音が聞こえました。遠くからズシンズシンと、だんだんこちらに近づいてきます。
(巻きが入っているので)工場長に違いありませんでした。
「悪い子はいねがー」
極東の島国における一部地方の神の使いの口ぶりで工場長が現れました。工場長は全長10mはありそうな巨大ロボットでした。重機のようなごついボディ、これは一歩間違えれば人身事故発生です。
「悪い子はいないわ。ここにいるのは機械工学全科目満点で、校長から学校始まって以来の才女と褒め称えられた良い子しかいないわ」
「ほう?」工場長はアリスを睨み据えました……が、すぐに「ズキュゥゥゥン」と自分で言って、人間で言えば心臓のあたりに手をやりました。
「見たことない美少女。友だちになりたいっ」
そういうことを口にして、友だちになれる可能性は低いと思われますが、工場長は最先端の処理能力をいっぱいいっぱいにして、アリスのことばかり考えている様子。処理能力、あればあるだけ無駄に使うこともできるから、選択と集中が大事だなあ、とアリスは帰ったら自分の学習に役立てることにします。
「あの、友だち、なってくれますか!?」
「なってあげてもいいのだけれど、代わりに他のエリアに進む許可をいただけるかしら?」
「え? だめだよ、そうしたらここからいなくなっちゃうじゃん!」
「友だちというのはね、距離が離れていても友だちなのよ。それに私、姉と妹がいるの。せっかくお友だちになれたのだから、姉妹も紹介したいわ。私は人間だから、あなたとお友だちになっても、四六時中は一緒にいられないの。人間は食べたり寝たりしないと駄目になっちゃうから。
でも姉妹がいれば、ずっとあなたの相手をしてあげられるわ。そう、8時間勤務3交代制による24時間お友達計画よ!」
アリスがそう力説すると、工場長の目のレンズがチカチカと高速で明滅しました。損得勘定しているのでしょうか。
「ぜひ、お願いします!」
優秀なAIでも、欲望には無力のようです。
「いま姉妹はリグレットの街で暮らしているから、私が迎えに行かないと」
「あー、そうするとスクラップ・エリアを抜ける必要があるね。危険じゃないかな?」
「どう危険なのかしら?」
「あそこのエリア長は破壊することしか考えてないからね。子供にも甘くないし。でもリグレットのエリアに行く許可は私が出せるから、エリア長に見つからなければ、なんとかなるかも」
「そう、スクラップ・エリアってどんなところかしら? うまく隠れていけるような場所なのかしら?」
「そりゃもう名前の通り、スクラップだらけだからね。隠れるところだらけさ。うん、なんかいける気がしてきたな。3姉妹との夢の生活が私を待っている」
「そうよ、私はうまく隠れてスクラップ・エリアを素通り。街で姉と妹を連れて、またスクラップ・エリアを素通り。それだけのことよ」
「わかった、君をこのエリア所属で登録して、移動を許可するよ。スクラップ・エリア、リグレット・エリア、そしてここ発電エリア、自由に移動可能だ。もっとも、三日以内に帰ってこなかったら、許可は取り下げ、君は所属エリアのここに連れ戻されるけどね」
割と抜け目ない奴でした。
「もちろんそれでいいわ。でも妹は体が弱くて移動に時間がかかるから、5日は欲しいわ」
アリスも抜け目がありませんでした。
「OK。それじゃ5日間の移動を許可する。君をデータバンクに登録してここに所属させるから、名前を教えてくれるかい?」
「ええ、アリスっていうのよ」
「アリス……その名前が人間の女の子に? いや、なんでもない」(思わせぶり)
この世界ではアリスの名前にやたら反応する人が幾人かいるようです。
「さあ登録できたよ。それでは私と君たちの夢のスウィートハニー生活のために、ちょっと出かけてきておくれ、アリス」
「すべて理解」

巻いたはずなのにあまり巻けてなくて、2エリアまとめて片付けるはずが、1エリアしか消化できず。これはもう企画開催期間中に終わりませんね、と嘆きながら、次の章に進むのです。

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