邂逅編
その1
https://www.chichi-pui.com/posts/fdb8a2f7-a56d-4f9e-bb43-bbdda00dcc4f/その2
https://www.chichi-pui.com/posts/04fde0da-8865-4541-b143-5e2531424468/その3(前編)
https://www.chichi-pui.com/posts/c858eca0-dd57-4d61-966f-a47038ab69c0/その3(後編)
https://www.chichi-pui.com/posts/735da30f-82e6-47d2-9dbf-d36f1e717fe1/その4(前編)
https://www.chichi-pui.com/posts/1d0740b6-d386-4080-b142-4e4f09659fc6/その4(後編)
https://www.chichi-pui.com/posts/705e47fb-b563-45ea-8199-0a4e0c3f3726/その5(前編)
https://www.chichi-pui.com/posts/e2902af6-7f4d-45ef-82f5-86ad5d09ec72/その5(後編)
https://www.chichi-pui.com/posts/b657a652-c15c-465f-8e48-f26517fc00d5/その6(プロローグ)
https://www.chichi-pui.com/posts/5251440b-6a9c-4b15-a58b-b120b2bacee4/その6(昔話)
https://www.chichi-pui.com/posts/f67e1309-679c-46b0-975d-b9778c6347d4/その6(正義の味方)
https://www.chichi-pui.com/posts/9db2dbac-6932-4828-bb18-b819017318fc/その6(罪を裁く者)
https://www.chichi-pui.com/posts/f944a1b3-e878-423d-b234-9d416351bdf6/その6(一つの終わり)
https://www.chichi-pui.com/posts/55084136-ca68-48c7-8133-1bd869bca0d2/その6(新たなる始まり)
https://www.chichi-pui.com/posts/29555d9d-c2ef-44a9-992f-00a0a362b9ca/屋敷編
その1(全年齢)
https://www.chichi-pui.com/posts/0818feb2-8f56-4ed6-bdd6-c080b4d6816c/それぞれの初夜 トワ編
https://www.chichi-pui.com/posts/3e885db3-7255-4f0a-b92e-4dc64f0705d2/それぞれの初夜 イノリ編 前編
https://www.chichi-pui.com/posts/35cef681-c435-44a9-a9a9-fdbd52c2bd1a/それぞれの初夜 イノリ編 後編
https://www.chichi-pui.com/posts/1e0ee791-9d71-4a76-9558-9da71cb3036c/外伝系
海の日(全年齢)
https://www.chichi-pui.com/posts/0caaab99-4bf9-4eb3-bee0-46a712527b7f/かつてそこにあった光景(全年齢)
https://www.chichi-pui.com/posts/4504be02-64bb-4634-adfc-9deec2a4097e/かつての出会い(前編)
https://www.chichi-pui.com/posts/785f42f2-3ecb-4082-b39d-ed8bf73bf4bf/かつての出会い(後編)
https://www.chichi-pui.com/posts/25075a29-a009-4c0c-a7b8-2f9f3ea5b17a/オ〇ニーの日
https://www.chichi-pui.com/posts/7495d4b1-5fb3-41ca-be04-42a43c2c1720/おっぱいの日
https://www.chichi-pui.com/posts/38718218-d801-4945-a289-5ddafa8369a0/パンツの日
https://www.chichi-pui.com/posts/b1fbfc25-dbba-477c-be4f-f25cab3c36e4/パンツの日の出来事
https://www.chichi-pui.com/posts/3a6bd37b-d70d-4481-9175-96587a4ac8ad/水着を贈ってみた
https://www.chichi-pui.com/posts/9508dbb9-2ab6-4ccb-9f9c-c59706bd0bd6/仕事中に
https://www.chichi-pui.com/posts/5fd35d6a-77bd-4d09-a63d-47757df43d05/バッドエンド系
水着編
https://www.chichi-pui.com/posts/788ff2ee-6130-40f6-afd6-5553da12278e/書こう書こうと思いつつ、どう着陸させるかで迷い迷いorz
どうにかなったので、ようやく投稿。
まっ、この次からは外伝など挟みながらかな。リメイク前の
ネタもぼちぼち拾ってはいく……予定(水着は拾ったが)
始まりはいつだって唐突だった。幼馴染であり、姉のような存在
であったクオンがメイドになった事。
そして、自分が学生の身でありながら、家を継ぐ事になったのも、
全てはあまりに突然の出来事だった。
「ここに居ましたか、坊ちゃま」
「ばあや……いや、メイド長」
「ふふっ、今は他の者は居ませんからばあやで構いませんよ」
彼女は僕やクオンが幼いころから屋敷に仕えてるメイドで祖父の
愛人だった女性だ。
祖父は多数の愛人を囲んでおり、父はそれを反面教師にして母だ
けを愛したという一面がある。母が亡くなった今でも父は独り身だ。
いつも思うけど、何歳なんだろうねこの人。
「ばあやは……クオンお姉ちゃんのことを知ってたのかい?」
「ここで預かると聞かされたのはここに来る数日前ですね。事情を
知ったのはつい先ほどですが」
あの後、父の口から事の経緯は聞かされた。彼女の両親が親友の
借金の連帯保証人となり、夜逃げされ、怪しいところからも借りて
いたので、せめてもと父に預けたと。ただ、それでも納得ができな
いというのか、感情が追い付かない。
「どうしてメイドに……」
「どうやらクオンはまだ坊ちゃまには何も言ってないようですね」
「う、うん」
クオンお姉ちゃんは何か言いかけていたが、僕はそれから逃げる
ようにして父の部屋を出て自分の部屋に戻っていた。
「それがあの子の意志だからです」
「クオン……お姉ちゃんの?」
「今回の一件、彼女達は被害者です。ですが、旦那様の力を借りる
際に、自ら申し出たようです。自分を働かせてくれと」
「……」
「まぁ、この件はすぐに片はつくでしょう。しかし、何もなかった
という事には出来ません」
「うん」
それは分かる。分かるんだけど……ね。
「彼女の両親は誠実ですね。必ずお金は返すと。旦那様は遠慮……
というよりはそこまでしなくても良いと言ったようですけどね」
それでも、ケジメと言うか禊と言うべきなんだろうね。そして、
クオンお姉ちゃんもそれに参加したというところか。
「まぁ、そういうわけで、クオン、入っていらっしゃい」
「なっ!?」
「し、失礼します」
先ほど見た時と同じメイド服に身に着けたクオンお姉ちゃんが
入ってくる。
「坊ちゃま、彼女はこの屋敷では一人です。でも、貴方が居ます」
「……」
「もし貴方が彼女を見捨てると言うのなら……」
「見捨てるわけないだろっ!! クオンお姉ちゃんは僕が守るよ」
「ら、ライ……」
「ふふっ、それでこそ坊ちゃまです」
やられた……。ぁぁ、もう。はぁ……。
「クオンお姉ちゃんの事情は分かった。ただ、二人きりやばあや
と一緒の時はなるべくいつも通りにして欲しい」
「うん、わ、分かった」
「まさに、雨降って地固まるですね」
そこ、煩いよと思いながらそこからは、平和な日々が続いた。
月日はしばらく流れある日の事だった。
「坊ちゃま、旦那様が!!」
血相を変えたばあやに、連れて行かれたのは病院。車での事故と
の事だが……調べさせている途中だが、どうにも我が家に恨みを
持つ者達、ほぼ壊滅済みの連中による最後の悪足掻きが、偶発的に
当たったというところらしい。
ICUに入ると、一目でこれはもう……助からないと分かるほどの
傷を負った父がベッドに横たわっていた。
「ライ……か」
「っ!! と、父さん!! し、喋らないで良いから」
「……。すまなかった」
「と、父さん」
「クオンの事が原因でお前とはあれ以降、ろくに話せなくなったが、
そ、それでも、お前が元気に育ってくれて……がはっ」
「父さんっ!! 大丈夫だから、今はもう分かってるから、だから」
それ以上喋らなくても良いんだ……なのに。
「わかって……いるはずだ……私はもう助からない。お前に全てを
押し付ける形になってしまう自分に腹立たしい限りだが……な」
「父さん」
そんな事を言わないでくれ。俺は……僕は……まだ貴方に何も
返せていない……なのに。
「メイド長」
「はい」
「ライとクオンが成人するまでは……頼む。その時まではアレは
君が預かっておいてくれ。面倒事を押し付けてすまない」
「畏まりました旦那様。必ずやお二人をお守りします」
「クオン」
「は、はいっ」
「自由に……生き、そして、縛られすぎるな……もしも、想いが
変わらぬならライを……頼む。」
「旦那様……はい」
それを言うと同時に父の身体から徐々に力が抜けていくのが感じ
取れる。
「父さん、駄目だ、逝くなっ!!」
「「旦那様っ!!」」
父が逝き、そこからは地獄だった。金の亡者となった親戚の一部
が僕を子供と侮り、色々と手を尽くして財産や会社を奪おうとし、
失敗すると、父を結果として亡き者にした連中と手を組んでまで、
屋敷に攻め込んできた。
その結果屋敷は崩壊というよりか焼失。代わりにあちらは完膚な
きまで叩きのめした上で、豚箱に全員叩き込めはしたが。
中立やこちらについた親戚達や父に仕えていた者達、会社の人達、
皆の力を借りて、屋敷を新しく建て直し、会社の方は譲渡や採算の
合わないのは潰したりと、整理をしながら今の生活がある。
「懐かしい話ですね……随分と経ってしまいましたが、」
「ばあやは相変わらず綺麗だね」
「ほほっ、お世辞を言っても何も出ませんよ」
ばあや、かつてのメイド長は父との約束通り、僕とクオンが成人
するまで屋敷に仕えてくれた。
「坊ちゃま……これを。成人するまでと預かっていたものです」
「これは?」
「家に関しての正当な後継者の印です。もっとも、普段は必要ない
代物ではありますが、ないと煩い者達も居ますからね」
屋敷が焼失した際に失われたかと思っていたけど、父さんがあの
時に言っていたのはこの事だったのかと納得した。
この後にばあやは自分の役目は終わったと屋敷を出てしまったが、
父の命日が近づくとこうして訪ねてきてくれる。
「そんな事があったのね」
「じゃあ、この屋敷のセキュリティは」
「かつては脆弱でしたからね。対人には優れていましたが、空から
の攻撃には弱かった。ドローンだけでなく、ヘリコプターを何機
も弾丸代わりに堕としてくるとは思いませんでしたしね」
トワとイノリにそう説明する。外から攻撃されても対処ができる
作りに祖父はしてたが、時代が移り変わってたのもあって、対空面
は甘かったのもある。
まぁ、追い詰められた相手が手段を選ばずに攻撃した結果、屋敷
は失われ、建て直す際に極力再現はしつつも、セキュリティ絡みは
ほぼ毎年更新する形になった。無論、対空も含めてである。
「合格」
なお、ばあやがイノリとトワを見た最初の一言がこれである。何
が合格なんだよ……いや、本当に。
「それは勿論、ライ直属のメイドとしての評価ですが?」
「絶対にそれ以外にもあるだろう」
「おやおや、何を想像したのでしょうね。このすけべは」
「ぐっ……」
トワとイノリも顔を赤くしないで欲しい。恥ずかしいなぁ。
「まぁ、ライもクオンも健在で何よりですよ。大立ち回りをした
とは噂で聞いていたので、どうしたものかと思いましたがね」
「大立ち回りって大げさな」
トワとイノリの件だろう。昔、派手にやらかした親戚達の闘争に
比べれば可愛いものなんだけど。
「まったく……私が居ればもう少しスマートにしてあげましたが、
こればかりは仕方ありませんね」
そうため息をつく。確かにばあやが居れば、あの案件はもう少し
手早く迅速に終わったかもと思うとまだまだ未熟だ。
「トワさん、イノリさん。どうか、ライをよろしくお願いします。
この子は普段はともかく……それ以外で大変とは思いますが」
「は、はい……お、お願いされました」
「が、頑張ります」
それ以外って何。いや、心当たりはあるけど。
「ところで、クオン。この二人には?」
「いえ、まだです」
「ふむ」
二人をじっと見る。
「素質はありそうですが、この子達の意思次第というところね」
「「い、一体何を?」」
「ライとクオンは身体に叩き込みましたが、技の継承です」
「技の継承ですか?」
「どんな技も使う者が居なければ廃れていく定め。まぁ、私が教え
たのはライには主に実戦での格闘術、クオンには鞭ですね」
「それでクオンさんは鞭を使っていたのね」
トワが納得したように呟く。そういえば、助けた際に鞭で複数人
倒してたとか言ってたな。
「無論、無理強いはしませんが、貴女達の身の安全のためと、ライ
を守る意味でも身に着けた方が良いでしょう」
「やります。イノリを守れなかったあの時の自分が許せないし、
今後を考えれば、それこそ皆を守るためにも身に着けたいです」
「私は暴力は嫌いです……でも、何も出来ないままの……弱いまま
の自分はもっと嫌です」
そうトワとイノリは決意を口にした。
「まぁ、私が滞在できる期間は少ないから、後はクオンに任せる事
になるけれど、少しの間、よろしくね」
「「はいっ!!」」
夜
「ライ、二人を止めなくて良かったの?」
「いつかは決めてもらわないといけなかったしね。止めようとも
思ったけど、二人の目を見たら何も言えなかったよ」
クオンからの問いにあえてそう答える。二人とも強い決意の目を
していた。だから、二人がばあやの弟子になる事を止めようとした
がやめた。
「なら良いのだけど……んあっ。今日はいつもより優しい」
「いつも優しいと思うんだけどなぁ」
「ふふっ……そうかしら」
ばあやがこうして訪ねてきた時は、初めてクオンと結ばれた時の
事を思い出して、自然と優しくなる。
過去
「ご主事様……いえ、ライ。ここに居たのね」
「クオン姉さん」
成長してからは二人きりの時はお姉ちゃんでなく姉さんと呼ぶよ
うになっていた。
一通りの騒動にケリを付けて少し経ったある夜のことだった。
「どうしたの? そんなに不安なそうな顔をして」
「僕はこの一連の騒動で嫌と言うほど自分の甘さを思い知ったよ」
「ライ……それは」
「皆の力があったから乗り越えられた。でも、僕はっ」
自分の弱さと脆さを知り何度も挫けかけた。時にはクオンを危機
に晒した。結果として無事だったが、自分がやっている事は本当に
正しいのかと自問自答しながら、戦いを終わらせるために動いた。
「ライ、貴方には私が居るわ。私には貴方が居る……だから」
泣かないで
「えっ?」
僕は泣いていた。父さんが死んだ時もろくに泣かなかったのに。
気付いたら涙が流れていた。
「僕は……泣けるんだね」
「そうよ。貴女が辛い時は私もその辛さを背負ってあげる。苦しい
時も楽しい時もずっと貴方の傍にいる」
「クオン」
「ライ」
キスやハニトラ対策で裸を見せ合ったり、寸前まではした事は、
何度かある。ただ、この時のキスは本当に心から繋がれた気がした。
「あっ……」
「クオンが欲しい」
「私もライが欲しい。だから」
「好きだよクオン」
「私もよライ」
翌朝、朝食に出たのは赤飯だったのは言うまでもない。