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そのイカロスは、古風な姿をしていた。
大昔に流行したという、さらに古風な架空の時代を模したファッション、スチームパンク風と言えばいいのか。
だが、このイカロス自身が奇跡の残響、「当代最高峰の現役イカロス」だと言う。
同じ奇跡の残響、意識のあるものであれば必ず心理状態を読み取れる「心眼」使用者である越夜隊の隊員は、端的に言えば「こいつ胡散臭い」と思った。
これからこの二人で、「神の繭」および異常な存在(仮称:アノマリィ)の心を上空から読み取る作戦だ。
今から心配だ、越夜隊隊員は思った。

心配は的中した。
「わあああああ、ちょっと、ちゃんと支えてる?!」
「大丈夫、掴んでるし重力アンカーで固定してるよ。やっぱり空を飛ぶっていいねえ!」
「でも落ち着かないんだよ!」
超音速で空を振り回され、やっぱりイカロスは何を考えてるか分からない、という思いを強くする彼女だった。

イカロスのことは頭から追い出し、彼女は地表の対象物を睨んだ。
越夜隊員を投げ飛ばすアノマリィ、黄昏梟を踏み潰すアノマリィ、旅人を追い回すアノマリィ……
「……心がない?まさか?」
他の人間・シンカロンの意識は明確に読み取れるのに、アノマリィからは何も見えない。
だが、「神の繭」周辺を見た瞬間、一帯のアノマリィの視界が一斉に流れ込んできた。
意識を失いそうになりつつ、ゲインを下げてもう一度「神の繭」を見る。
間違いない。アノマリィは単なる「ドローン」で、神の繭から遠隔操作されてるようだ。
更にゲインを落とし、神の繭らしき意識自体に心眼の焦点を合わせる。
「――え?」
神の繭の意思は単純、かつ意外だった。

『我ノ眠リヲ妨ゲルナ』

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