ヒトと生物の境界
あの女が物騒な狙撃手の首を難なく、涼しい貌のまま刎ね落としたところで俺は観測を終えた。俺の目にも、あの女の顔面に50口径の対物ライフルの弾丸が直撃したとはっきり観て取れた。ところが結果はこうなった。恐らくだが、俺もあいつも視覚情報を乗っ取られ、爆散即死したものと誤認させられた……と推測する。しかし先に接触した自分はともかく、ほぼ接触した筈もないあいつの認知をどうやって歪ませたものか。それに、そうだとすればあの女は音速を超えるライフル弾を直撃寸前で避けた、ということになる……いずれにせよ、ナノスキンは俺等の界隈の常識を、人智を超えた技術だということを思い知った。女が散歩を終えて帰宅したかのように戻ってきた。何食わぬ顔で女を観察すると、後頭部の、埃も被っていない艷やかな銀髪の隙間に、血腫のようなものが確認できたが、その途端、髪に隠れて消えてしまった。ナノスキンについての触れ込みにこんな噂があったことを思い出す。曰く、首がもげても再生してしまう……だとしたら、そいつの記憶は?自我は?それは人間か?、助手席にて微笑を湛える女への恐怖ともつかぬ違和感に苛まれ、俺はハンドルを握る掌に嫌な汗を滲ませながら予約されたホテルへと車を黙々と走らせた。
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こういうグロテスクが好みなのだが、こういう世間一般にちぃとも刺さらない嗜好の作品なんか滅多にお目にかかれない。なので脳内イメージの解像度を上げに上げてくれるAI画像生成は素晴らしいのである。
呪文
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