不思議な世界
桜色のワンピースを翻し、少女は軽やかに歩いていた。
――はずだった。
「えっ!? きゃあぁぁっ!!?」
足を踏み出した瞬間、地面がふわりと消えたような感覚。
バランスを崩し、目の前がぐるぐると回る。
ドサッ!
「……いたた……え?」
倒れ込んだ先は、さっきまでとは全く違う場所だった。
周りを見渡すと、まるでおもちゃのようなミニチュアの世界が広がっている。
「なんで……こんな小さな家ばっかり?」
どの建物も、まるでドールハウスのように精巧に作られていた。
けれど、自分が大きくなったのか、それとも世界が小さくなったのか、よくわからない。
「とりあえず、歩いてみよう……」
春のワンピースがふわりと揺れる。
木々は小さく、花々は大きく見え、まるでおとぎ話の中に迷い込んだようだった。
――気がつくと、日が暮れ始めていた。
「え、もう夕方?」
淡い桃色だった空が、ゆっくりと紫に染まっていく。
辺りが静まり返る中、ふと前を見上げると――
不気味な黒い城が、ぽつんとそびえ立っていた。
「……なに、あれ……?」
静寂の中、風がそっと吹く。
わたしは、ごくりと息をのんだ。
呪文
入力なし
コメント
コメントをするにはログインをする必要があります。