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数人だけの小さな即席同盟は神の繭を封印するため共闘した。
越夜隊のランは右手にシールドを携えている、もともとがシンカロン用の装備でとても重い。
旅人のユキは小柄で盾を持つどころか動かすことすら出来ない。黄昏梟のミカは「肉体労働は苦手」と早々に拒否した。
仕方なくランが無言で盾を拾うと、おもむろに構えて試してみる。
「行けそうよ」
作戦はこうである。
あの球体は自身の距離20メートルを防御点としているようで、その中にいる人間を自動的に攻撃してくる。
攻撃と言っても火砲はない。繭が発する何らかの重力で周辺に浮遊する金属片を超高速で投げてくる。
一度試しに踏み入ったが100以上の投射でしてやられ、退避した装甲戦闘車をボロボロにした。
「いい、ランちゃんが盾で防いでいる間にユキちゃんが球体の真下にはいってアクセスポートにこいつを繋いで。押し込めばいいだけよ」
球体は1m程度浮遊していてアクセスポートがその下にあった。
「繋いだらすぐに私のもとに入りなさい。いつまで持つかわからないけど・・・」ランがつぶやく
ユキは無言で頷く。
「そして私が端末を操作するわ。コマンドうって作動するかはわからないし、どの程度の時間で作動するかも・・」
「賭けだな」
スカイペネトレータから確保した遺物は遠隔制御モジュールで接続して使えるよう改造されていた。
明らかに規格が違うモジュールがつながっていて配線もむき出しだった。
「それじゃいこうか」ランが無感情につぶやいた。

盾をガツンガツンと金属片が高速で叩きつける。ゾーンに入った瞬間盾の重さが不安定になり、急激に重さを増減させていた。引きずったり抑え込んだりランは悪戦苦闘していた。
その後ろを2人が続く、盾が弾く音だけじゃなく、くぐもった貫通仕掛ける音も鳴り響いた。
最後はにじり寄るように球体に近づく。ユキが場を見て破片が途切れるのを見極めると、すかさず飛び出して球体の真下に駆け寄る。1メートル程度上にあるポートにユニットをつなげようとした瞬間足に痛みが走る。2センチ程度の破片が足にめり込んだ。それでもなお立ち上がって、ユニットを押し込む。
「ユキが動けない」ランが冷静に報告する。
「ユキちゃん!!」
ミカが飛び出してしまった。接続したユニットを確認するとユキはそのまま倒れてしまった。その上からかばうようにミカが覆いかぶさると、ユニットに繋ががる端末を取り出してEAP -f -- A -rinと打ち込む。
が、その瞬間に破片が繋いでいたワイヤーを切断する。送信と切断とほぼ同時だった。
「しまった・・・」
「ミカさん!」
「ごめんね・・・」
一瞬つむじ風が舞うと今度は一転して静寂が包んだ。
「・・・・成功か?」
ランがぼろぼろになった盾を捨てる。もう盾ではなく持ち手と穴だらけの板となっていた。
「ミカさん大丈夫?」
ユキが心配そうに覆いかぶさってうなだれるミカを揺らした。
その瞬間神の繭、球体はは発光を始めて振動する。
振動したまま、何度か降下と浮上を繰り返しながら今度は一転して上昇を始める。
「飛んでいってしまう・・」
ランが手を追うようにかざしす。支配者の断片、畏怖の念で神々しく感じた。
ユキがミカが抱きかかえていた、ぼろぼろになった端末の画面を見やる。
Thank you YUUKI and Goodbye//RIN
標準出力でリダイレクトされた一文が点滅していた。

「飛んでいっちゃったんですか?」
ミカの後輩ちゃんが押っ取り刀で駆けつけたときには神の繭ははるか上空の点になって更に上昇をかけていた。
「お前らのミッションは完遂したんじゃないのか」
ランが手当を受けながら後輩に声を掛ける。
「いやだって、あれは・・・」
「もっと大事な成果を得られたと思いますよ」
ユキが足を引きずりながら残った唯一の遺物、端末をランに手渡す。
「そうだな、話し合あえるというのは殴り合うより大切かもしれん」
ランは受け取るとRAMユニットを外して自身の端末にコピーする。情報は膨大だが欠損が多く解析できるかどうかは不明だった。
そのRAMユニットを後輩に手渡す。
「ミカとの約束だからな」
「先輩は・・・・」

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